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プレミアムフラワーの花コラム

第103回:雪柳~見かけによらぬもの

2026.4.1

 春昼の日差しを返す雪柳(湯上稔子)
 公園の一角が眩いほどに白一色に染まっていました。雪柳(ユキヤナギ)です。柳のように枝垂れる枝に小さい無数の白い花が雪をかぶったように咲き乱れる花姿を見ると、名前の由来は聞かなくても分かります。

四季を通じて楽しめる

 雪柳は柳のように見えてもヤナギ科ではなく、バラ科シモツケ属の落葉低木です。春に直径7mmから1cmほどの小さな白い五弁の花を枝いっぱいに咲かせます。小さな花がお米のように見えることから、小米花(コゴメバナ)、小米柳(コゴメヤナギ)の別名もあります。
 原産地は日本と中国。日本では関東より西の本州、四国、九州の川沿いの岩場などに自生しています。秋になると赤みがかった色や黄色に紅葉し、四季を通じて楽しむことができます。丈夫な花なので、公園や庭園など様々な場所で植栽され、生け花やフラワーアレンジメントの花材としても人気があります。

作品に趣きを添える花

 雪柳は、いくつかの文芸作品に趣きを添える花として登場します。
 安西篤子の小説「愛おしく候」では、春先に主人公の小次郎が墓参する場面で『一抹の雪柳が、いましもまっ白に花をつけていた。』と雪柳はさりげなく登場します。村上勉は随筆で『寺の土塀のそばで、雪柳が白い流れのように続いていた。』と書いて、日本の春の風景を表現しています。
 泉鏡花の小説「雪柳」の中の一節『雪柳が白くこぼれるように咲いて、春の風にゆれていた。』は、女性の淡い恋情を重ね合わせたものでした。

庭に植えてはいけない

 雪柳は花をつける季節と小さな可憐な姿から、春の訪れや女性の美しさを象徴する花として描かれてきました。「こんな花なら身近で育てたいな」と思って調べてみると、ネットには「雪柳を庭に植えてはいけない!」という思いがけない記事がいくつも載っていました。

繁殖力が強い

 その理由は、雪柳は非常に繁殖力が強いことです。地面に落ちた種や土中に伸びた茎から、あちこちに芽が出て、庭全体が雪柳で埋まってしまうことがあります。枝が横に広がって、隣の敷地や道路にはみ出ることもあります。多くの本やサイトには「雪柳は手を掛けなくても成長する」と書いてあります。確かに成長はしますが、定期的に剪定するなどして手を掛けないと手に負えなくなってしまうのです。
 奈良市の海龍王寺は雪柳の名所として知られ、奈良県公式観光サイト「なら旅ネット」には満開の写真が掲載されています。高さは2m以上あるでしょう。見応えのある見事な雪柳ですが、これを民家の庭で栽培するとなると大変です。
 ※写真は「なら旅ネット」から転載

縁起が悪い?

 庭に植えてはいけない理由はまだあります。花が散ると小さな無数の花びらが広範囲に広がり、掃除に手間がかかります。さらには、雪柳は縁起が悪いという指摘もありました。幽霊が柳の下から出るというのは怪談のお決まりです。このイメージから連想した話かもしれませんが、そもそも雪柳は柳ではないので、縁起が悪いというのは誤解と言えるでしょう。

花も見かけによらぬもの

 雪柳の一つひとつの小さな花を見ると、か弱い感じさえします。そんな花がこんなにも生命力に溢れているというのは意外でした『人は見かけによらぬもの』と言いますが、人に限ったことではないようです。

※参考図書
「愛おしく候」(著者:安西篤子、発行所:講談社)
「鏡花全集 巻24」(著者:泉鏡花、発行所:岩波書店)
「水上勉集 新潮日本文学」(著者:水上勉、発行所:新潮社)

※参考サイト
「わたしの花図鑑」
「みんなの趣味の園芸 ユキヤナギ」
「園芸基本の木」
「はてなブログ」
「なら旅ネット」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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