花コラム
花コラム第98回:ネリネ~見た目が9割
第98回:ネリネ~見た目が9割 2025.11.1 人と人とのコミュニケーションにおいては、言語による情報が7%、聴覚による情報が38%、そして視覚情報が55%の割合で影響を与える―。心理学の『メラビアンの法則』によると、私たちは非言語情報に大きく影響されます。視覚情報の影響はもっと大きく、「見た目が9割」という言葉もあります。 ネリネは秋から冬にかけて、白や赤、オレンジなどの花を咲かせる球根植物です。原産地は南アフリカ、ヨーロッパで品種改良が進み、日本へは大正時代初期に渡来しました。 ネリネは当初は見た目で彼岸花=写真=の一種と考えられていました。彼岸花は前々回のコラムでご紹介したように、墓場に咲く花として忌み嫌われることがあります。その連想からネリネも縁起の悪い花と思われて敬遠され、先の戦争中には多くの品種が途絶えてしまいました。 翻って、ヨーロッパではネリネのイメージは全く異なりました。花の名の由来はギリシャ神話に登場する美しい水の妖精「ネーレーイス」。妖精のように美しい花ということです。花びらは光沢があり、日差しを受けるとダイアモンドのようにキラキラと輝く姿から「ダイヤモンドリリー」とも呼ばれます。花言葉も「輝き」「華やか」「かわいい」「幸せな思い出」など明るいイメージのもので、ウェディングブーケにも使われる人気の花です。 日本ではネリネは絶滅する恐れもありましたが、広瀬巨海(ひろせ・おおみ)氏ら熱心な園芸家らの努力で球根は引き継がれ、花のイメージは次第に良くなっていきます。そして今では、ネリネの評価は一変しました。 私が愛読している『趣味の園芸』は、2023年8月号で「輝く花 ネリネ」を特集しました=写真=。「繊細なラメをちりばめたようなきらめく花びらが美しい」などと紹介。「ネリネのいいね!」と題して、「美しさが長もち」「土も肥料も少量でOK」「植えっぱなしで育つ」「20年以上長生き」「病気や害虫に強い」などと良いところを列挙し、美しいだけでなく、育てやすいことも強調しています。 ネリネそのものは変わらないのに、時の流れとともに評価はゴロっと変わりました。海外での高評価に影響されて、「よくよく見れば美しい花だ」と気付いたということなのでしょうか。それに、彼岸花とは別の花だという認識が広がったこともあるでしょう。
※参考図書プレミアムフラワーの花コラム

人は見た目で判断することが多いという法則ですが、花は話したりはしないので、なおさら見た目で評価されることになります。その「見た目」で、ネリネは数奇な運命をたどりました。彼岸花に似ていることが災い

小さなユリの花が集まって一つの花になったような形をしており、おしべとめしべが外に飛び出した様子は彼岸花に似ています。このことが、ネリネに災いしました。縁起の悪い花?

二つの花は同じヒガンバナ科ですが、彼岸花はヒガンバナ属でネリネはネリネ属。彼岸花には毒がありますが、ネリネにはありません。開花時期や葉のつき方なども違い、この二つは別の花です。しかし、似ているということだけで、ネリネには彼岸花の悪いイメージが付いて回ることになったのです。妖精のような花

評価は一変した

「見る目」と「見た目」
人々の「見る目」が変われば、同じ「見た目」の花のイメージも変わっていきます。花だけでなく、人の評価にも通じることかもしれません。◇
「趣味の園芸」2023年8月号(編集:日本放送協会、発行:NHK出版)
「人は見た目が9割」(著者:竹内一郎、出版:新潮社)
※参考サイト
「BEGINNERS GARDEN」
「SPIBRE」
「春夏秋冬「AGSコラム ネリネの基礎知識」
「あわひなる 花屋全史 手稿」













