花コラム
花コラム第79回:マーガレット~恋が必ず実る花占い
第79回:マーガレット~恋が必ず実る花占い 2024.3.1 占いがブームになっています。コロナ禍や天災、政治の混乱、緊迫化する国際情勢などが相まって、先行きの見えない不安感が漂っていることが背景にあるようです。 占いの歴史は古代にまで遡ります。花占いの起源ははっきりしませんが、古くからヨーロッパなどで行われてきました。占いには、コスモス、デージー、サイネリアなど花びらの多い花が使われますが、マーガレット=写真=が定番と言われています。 マーガレットはキク科モクシュンギク属の多年草で、3~7月に白色の一重咲きの花をつけます。黄色やピンクの八重咲きの花も栽培されています。乙女が心惹かれる花とされ、欧米では女性の名前にもよく使われます。集英社が1963年に創刊した2冊の少女漫画雑誌の名前は「マーガレット」=写真=と「別冊マーガレット」でした。 ゲーテが1808年に著した戯曲「ファウスト」第一部では、ファウスト(Faust)と散歩していた恋人のマルガレーテ(Margarete)が道端の花を摘み、恋占いをします。 この花もマーガレットだったと言われることが多いのですが、ゲーテの戯曲には「シオン」=写真=と書かれています。マルガレーテはドイツ語圏での女性の名前ですが、英語圏ではマーガレットになります。ファウストの登場人物の名前が花占いに使われた花の名前と取り違えて伝えられたようです。 「好き」と「嫌い」は「子供は食べ物の“好き嫌い”が多い」などと言うように、合体して一つの名詞になっています。順番は「好き」が先で、「嫌い好き」とは言いません。花占いをする場合も大半の人は最初に「好き」を唱えるでしょう。そうすると、花びらが奇数の花は「好き」で、偶数の花は「嫌い」で終わります。 占いは、運命や未来のことなど予測できないことを予言するものです。花びらの枚数の決まっている花を使った花占いは、占う前から結果は決まっています。これはもう占いではなく、花びらをむしり取るだけの遊びと言えなくもありません。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
占いにも色々ありますが、花占いは多くの人が一度はやったことがあるのではないでしょうか。「好き」「嫌い」と交互に口にしながら花びらを一枚ずつむしり、最後の花びらが「好き」なら恋は実り、「嫌い」なら実らないというものです。マーガレットは花占いの定番の花
乙女が心惹かれる花
「ファウスト」の恋人も占った
《マルガレーテ/span> お好き。お嫌い。お好き。お嫌いー
(最後の一片をむしり取って、さもうれしそうに)
お好きだわ。
ファウスト 好きだとも。この花占いを、
神々のお告げだと思っておくれ。》
※写真はドラクロワ作「マルガレーテを誘惑しようとするファウスト」
※戯曲は高橋義孝訳人と花の名前を取り違えた?
マーガレットは恋が実り、コスモスは実らない
花には花びらの枚数が決まっているものと決まっていないものがあります。いくつかのサイトでは「マーガレットの一重咲きの花びらは21枚」と書かれています。実際にマーガレットの写真を集めて花びらを数えてみると、20枚、22枚など偶数も結構ありますが、総じて奇数の21枚が多いということでしょう。ということは、この花で占えば「好き」で終わるケースが多くなります。
ちなみに、コスモスの花びら=写真=は偶数の8枚と決まっています。最後の花びらは必ず「嫌い」になり、占った恋は実りません。花びらの枚数で決まる占い結果
「ファウスト」のマルガレーテはどうだったのか? 気になって、シオンの花びらの数を調べてみました。14枚、17枚、16枚、15枚…。個体によって花びらの数はまちまちでした。これなら、占いになります。◇
「ファウスト第一部」(作者:ゲーテ、訳者:高橋義孝、発行所:新潮社)
「花をめぐる物語」(著者:星野椿ら、発行所:かまくら春秋社)
「私の少女マンガ史」(著者:小長井信昌、発行所:西田書店)
※参考サイト
「マーガレットとは みんなの趣味の園芸」
「マーガレットの花 育て方・楽しみ方」
「花木図鑑 マーガレット」「乙女の期待を裏切らない科学的な花占い マーガレット」
※ドラクロワの絵画は国立西洋美術館のホームページから転載。