2020.7.1

第35回：花は見かけによらないもの～七変化のランタナ

　おとなしそうに見えた人が付き合ってみると、ややこしい人だった。強面と思っていた人が実は優しかった。「人は見かけによらぬもの」と言いますが、花にも見かけによらないものがあります。

造花のような可愛い花

　散歩途中の道端で、初めてランタナを見た時は驚きました。遠目には2、3ｃｍの花に見えましたが、近づいてみると一つひとつに赤や黄、ピンク、紫色などのいくつもの小さな花が身を寄せ合うようにして咲いています。計算しつくされたような可愛い造作に、一瞬、造花ではないかと思いました。

初夏から晩秋まで楽しめる花

　ランタナはクマツヅラ科シチヘンゲ（ランタナ）属。南米が原産の熱帯植物で、19世紀に小笠原や沖縄に渡来し、全国に広まりました。1mほどの低木のランタナ・カマラと地面をはうように枝を広げるコバノランタナの二種類に大別されますが、いずれも5月から11月までの長い間、花を咲かせます。

外観からは思いもよらないことが

　最初は淡い色合いですが、次第に濃い色に変わっていきます。色が変わることから、「七変化」の和名が付けられました。色を変化させながら、半年以上も咲いているとなれば、自分の手で育てたくなります。その気になって園芸の本やサイトを調べてみると、可愛い外観からは思いもよらないことが分かりました。

環境省が要注意外来生物に指定

　ランタナは、環境省から「要注意外来生物」に指定されていたのです。外来生物法では、人の生命・身体、農林水産業などへ被害を及ぼす恐れのある外来生物を「特定外来生物」に指定し、栽培や保管、輸入などを規制しています。「要注意外来生物」とは、「特定外来生物」に選定するかどうかの適否について検討中、あるいは調査不足から選定されていないもののことです。野生化すると在来種に影響を及ぼすこともあると言われています。

侵略的外来種ワースト100の一つ

　国立環境研究所の『侵入生物データベース』には、ランタナは「有毒植物。多種の虫、菌の寄主、ネズミの巣となる。子供が種子を食べると死ぬことがある」と恐ろしげなことが書いてあります。「世界の侵略的外来種ワースト100」にも指定されています。『医薬品情報21』では、未熟の果実に含まれるランタニンという物質は「誤食すると激しい腹痛や虚脱状態を起こすが、致命的ではない」と書かれており、決して口にしてはいけない植物です。
　おとなしそうに見えた花は、実はややこしい花だったのです。

ランタナの評価は？

　そうとは言っても、ランタナは園芸品種も作られ、花屋さんで普通に売られています。「ランタナは強い生命力をもった花なので、ガーデニングが初めての方におすすめです」「ランタナを種から育ててみよう」などと書いたサイトはいくつもあります。ワースト100のレッテルを貼られる一方で、栽培を勧められる。ランタナをどう評価すればいいのか、分からなくなってきます。

時には離れて向き合うことも

　可憐な花、綺麗な花、美しい花……。花と言えば、ステレオタイプの形容詞が浮かんできますが、自然界で生き延びるには、花にもそれぞれ、それなりの逞しさがあり、時には人間にとって不都合なこともあります。
　新型コロナウィルス感染症の対策として、人と人はソーシャルディスタンス（社会的距離）を取ることが推奨されています。花も綺麗だからといって、むやみに接して育てるのではなく、少し離れて観察することが必要な時もあるということでしょうか。

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※参考書籍
「みんなの趣味の園芸　ランタナ」（ＮＨＫ出版）
※参考サイト
「国立環境研究所　侵入生物データベース」
「日本の外来種対策　環境省」
「医薬品情報21　ランタナの毒性」
「HORTI by Green Snap」
「nano’s library」