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花コラム

第37回:人生の最良の日々~コルチカムの場合は?

プレミアムフラワーの花コラム

2020.9.1

第37回:人生の最良の日々~コルチカムの場合は?

 平和、愛、情熱、優美…。花言葉は大まかな、抽象的なものが多いのですが、中には妙に具体的なものもあります。コルチカム(和名・イヌサフラン)の花言葉は「私の最良の日々は過ぎ去った」と「危険な美しさ」。一体、コルチカムに何があったのでしょうか?

花の名前の由来

 コルチカムはイヌサフラン科イヌサフラン属の多年草で、原産はヨーロッパと北アフリカ。9月から10月にかけて、透明感のあるピンクや白、紫などの花を咲かせます。黒海東端の都市・コルキスにたくさん咲いていたことからコルチカムと名付けられました。

イヌは役に立たない?

 和名のイヌサフラン=写真左側=は、アヤメ科の薬草・サフラン=写真右側=の花に似ていることに由来します。植物の世界では、本物に似ているが、本物のように役に立たないものの名前の頭に「イヌ」を付けることがあります。「イヌムギ(麦)」「イヌビエ(稗)」といった類です。「犬」あるいは「否(いな)」が転じて「イヌ」になったと言われています。イヌサフランは「サフランに似ているが、サフランのように生薬や香辛料にはならない」ということで名付けられたようです。

トリカブトより強い毒を持つ

 種子や球根には悪心や下痢、呼吸困難を引き起こすコルヒチンという猛毒物質が含まれています。誤食による死亡事故は、年によっては“植物界最強の毒花”と言われるトリカブトよりも多く発生しています。コルチカムはまさに「危険な美しさ」の花言葉通りの花です。

最良の日々の意味

 それでは、もう一つの花言葉「私の最良の日々は過ぎ去った」はどうでしょうか?花言葉に関する本の何冊かには、「秋に咲くことから、まぶしかった夏を思い出している」「夏の盛りを過ぎてから咲く」などと書かれていました。この説明なら秋に咲く花全てに当てはまりますが、コルチカムの場合は寂しげな花の姿も相まって、この花言葉が生まれたのでしょう。

人生の絶頂期はいつ?

 人生は春夏秋冬になぞらえられます。夏は人生の絶頂期とされることが多いのですが、絶頂期は人によって異なり、一概には言えません。
 大学で教員をしていた頃のことです。授業の中で受講生に自由に発言してもらう時間を設けると、女子学生の一人が「私は年を取るのが怖いんです。これから一瞬一瞬、老いていくと思うと、悲しくなります」と言ったことがあります。二十歳そこらの女性が…と驚きましたが、彼女は人生の夏は10代で終わると思い込んでいたのでしょうか。

年を取るということは…

 思い詰めたような彼女の顔を見て、とっさに次のような言葉が口をついて出ました。「年を取るのは悪いことばかりではない。年齢を重ねていけば、その時々に良いこと、楽しいことも色々とある。それに、年を取ると物事を深く感じることが出来るようになる」。彼女は黙って聞いていましたが、この話が心に届いたかどうかは分かりません。
 それから10年近くが過ぎました。30代に差し掛かった彼女は、コルチカムの花言葉にとらわれず、充実した人生を切り開いているでしょうか?

※参考図書
「想いを贈る花言葉」(監修:国吉純、発行:ナツメ社)、「植物による食中毒と皮膚のかぶれ」(共著:指田豊、中山秀夫、発行:少年写真新聞社)
※参考サイト
「薬草に親しむーイヌを含む植物名」、「『イヌ』と名の付く樹木図鑑」、「mirusiru.jp」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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