花コラム
花コラム 第20回:カラーは様々なイメージを持つ花
2019.4.4 第20回:カラーは様々なイメージを持つ花
カラーが花屋さんの店先に並び始めました。黄、ピンク、紫と色とりどりですが、カラーと言えばやはり、ウェディングブーケになった白いカラーが思い浮かびます。花期は6月までなので、ジューンブライドが手にする機会は多くなります。
カラーは草丈15~100cmの多年草で、襟(えり)のような円錐形の花を咲かせます。もっとも、これは花ではなく、仏炎苞(フツエンホウ)と呼ばれるガク(萼)が変化した部位。本当の花はガクの中にある黄色い棒状の部分です。
名前の由来は諸説があります。ギリシャ語の「Calla(美しい)」からきた。白いガクが修道女の服の衿(カラー)に似ているーなどといったものです。花言葉は「乙女のしとやかさ」「華麗なる美」「清浄」「清純」。花言葉や修道女を連想してか、ひたすらに清く、清楚な佇まいの花というイメージを抱いていました。ウェディングブーケの定番になっているのも、こうしたイメージがあるからでしょう
「清く、清楚なイメージを抱いていました」と過去形で書いたのは、2010年春に東京・渋谷で開かれた「美しき挑発 レンピッカ展」(Bunkamura、日本テレビ放送網、読売新聞東京本社主催)の作品解説を読んで、カラーのイメージが変わったからです。
タマラ・ド・レンピッカ(1898~1980)=写真=は1920~30年代にかけてヨーロッパを席捲したアール・デコを代表する、ポーランド出身の女性画家です。激動の時代の流れに翻弄されながらも自由な生き方を貫き、独特の画風が注目されました。ピカソは彼女の画風を「統合された破壊の斬新さ」と評しています。
展示された作品は個性豊かなものばかりでしたが、中でも「カラーの花束」(油彩、1931年ごろの作品)=写真=が印象に残りました。作品には、次のような書き出しの解説文(E.Bの署名)が添えられていました。 『もしレンピッカが紋章を作ったなら、その中心にカラーの花を据えたに違いない。彼女の作品にはそれほど頻繁にこの花が登場する。レンピッカがこの花をこよなく愛した事実は、いったい何を意味しているのだろうか。』
そう言えば、「清く、清楚な佇まい」というイメージは、ガクの白い色や形だけを見て連想したものでした。中心部の黄色い花に注目して見ると、内に秘めた力強いイメージもわいてきます。 花にはそれぞれ、おおよそ定まったイメージがあります。しかし、花のどこに注目するかによってイメージは変わってきます。花の持つ多面性に、E.B氏の解説文が気付かせてくれたような気がしました。
カラーの花のイメージは? そう聞かれれば、以前なら「清くて清楚」と即答していました。今なら、それに「力強さ」「艶やかさ」「秘めたエネルギー」を付け加えたいと思います。相反するようなイメージを併せ持つのも、カラーの魅力ではないでしょうか。
※参考文献プレミアムフラワーの花コラム
花に見えるのはガクの部分
ひたすらに清く、清楚
展覧会でイメージが変わった
アール・デコを代表する女性画家レンピッカ
彼女がカラーの花を愛した訳は?
どこを見て、イメージするか?
相反するイメージを併せ持つ花
◇
「花言葉・花飾り」(編者:フルール・フルール、発行:池田書店)
「くらしを彩る花の本」(編集:講談社エディトリアル、発行:講談社)
※参考サイト
「美しき挑戦 レンピッカ展」公式サイト(レンピッカと「カラーの花束」の写真は、このサイトから転載)
「結婚式はカラーのブーケで大人エレガントに!」
「LOVE GREEN」
コメント

コメントはまだありません。