花コラム
花コラム 第43回:タンポポの咲く季節は
2021.3.1 第43回:タンポポの咲く季節は ♫スミレ、タンポポ、レンゲソウ。春めいてくると、三つの花の名前が歌詞の一部のように口をついて出てきます。戦前の初等科国語の教科書「よみかた」の「花まつり」の項=写真=に出てくる一節です。 とは言え、実際にはタンポポは春だけでなく、夏や秋にも咲いています。道端や空き地、時には舗装道路の割れ目などで、たくましく花をつける姿は日常的に見かける景色です。では、どうしてタンポポは春の野花の代表のように言われるようになったのでしょうか?
タンポポはキク科タンポポ属の植物の総称で、世界では数百種はあります。日本で生育しているタンポポは、日本タンポポと言われる在来種と西洋タンポポと言われる外来種(帰化種)に大別されます。西洋タンポポは「明治時代に札幌農学校のアメリカ人教師が、サラダに使う食用野菜として初めて日本に持ち込んだ」と伝えられています。 その予言通り、1960年代には西洋タンポポは日本各地で見られるようになりました。今では、タンポポのうち8割は外来種、あるいは外来種と在来種の交雑種が占めています。西洋タンポポは開発が進んだ都市部周辺で在来種に取って代わり、日本タンポポは昔から環境が変わらない、良質な土壌の郊外、田畑、森などで劣勢ながらも頑張っています。それぞれ特性に応じて、ほぼ棲み分けが出来ているようです。 日本タンポポは春の短い間だけ咲きますが、西洋タンポポは年中いつでも花をつけます。初等科国語の教科書が出版されたのは1941年。この頃は西洋タンポポはまだ少なかったので、人々は日本タンポポを見て「タンポポは春に咲く花」と思い込んでいたのでしょう。その後、西洋タンポポが増えるにつれて、タンポポは夏や秋にも当たり前のように見かける花になっていきました。 在来種と外来種は、ちょっと見ただけでは区別がつきません。見た目の大きな違いは、西洋タンポポ=写真左側=は花の根本を包んでいる緑色の総苞片(そうほうへん)が外側へ反り返り、日本タンポポ=写真右側=は反り返っていないということぐらいです。 環境省は西洋タンポポを「日本の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種」として生態系被害防止外来種リストに指定しています。西洋タンポポが悪者にされたような感じがしますが、外来種は全て悪いという訳ではありません。
例えば、クローバーの別名で知られるシロツメクサ。明治時代に家畜の飼料として外国から日本に持ち込まれた帰化植物です。それが今では、地球を豊かにする緑化資材として用いられています。「四つ葉のクローバーを見つければ幸運が訪れる」という伝説も定着し、身近な、親しみのある植物になりました。 タンポポも、外来種が在来種の生態系を変えたのは確かですが、どちらも可愛い花であることには違いありません。タンポポに季節感がなくなったのは少し寂しい気もしますが、ものは考えよう。年中楽しめる、より身近な花になったとも言えるでしょう。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
コラムの下調べをするまでは、この教科書を読んだことはありませんが、春の代表的な野花として言い伝えられてきた一節が、語呂の良さもあって耳に残っていたようです。たくましく咲く花
日本タンポポと西洋タンポポ
日本の“植物学の父”牧野富太郎は、1904年に繁殖力の強い西洋タンポポが札幌で見つかったことを発表し、「将来、このタンポポが日本中に広がっていくだろう」と予言しました。外来種が在来種を上回る
春の花から年中いつでも咲く花へ
外来種と在来種の違い
西洋タンポポは悪い花?
日本タンポポも西洋タンポポも
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「タンポポ ハンドブック」(著者:保谷彰彦、発行所:文一総合出版)
「日本のタンポポとセイヨウタンポポ」(著者:小川潔、発行所丸善出版)
※参考サイト
「レファランス協同データベース『よみかた 第3』(文部省編 昭和16年)初等科国語第三学年」
「生態系被害防止外来種リスト‐環境省」
「社会対話・協調推進オフィス 五箇さんに聞く!“外来種”は悪者?」
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