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花コラム

第29回:松は梅より上等なの?~松竹梅の意味合いと順番

プレミアムフラワーの花コラム

2020.1.1

第29回:松は梅より上等なの?~松竹梅の意味合いと順番

 令和初のお正月を迎えました。かつては家々の玄関先で見かけた門松は少なくなりましたが、デパートなど商業施設に飾られた門松が新春ムードを盛り上げています。門松になくてはならないものは、祝い事、喜び事の象徴である松、竹、梅。梅はまだ咲いていないので、造花で間に合わせたものが多いようです。

松竹梅の3点セットは中国で生まれた

 数ある植物の中で、どうして松竹梅が縁起物になったのでしょうか?厳しい寒さの中で松と竹は緑を保ち、梅は花を咲かせる。この特性が好まれ、中国では古くから歳寒三友(さいかんのさんゆう)と呼ばれ、絵画に描かれてきました。日本と中国の古典に詳しい中国の韓☆(☆は雨冠に文の異体字。英語表記はWen Han)博士は論文「日中『松竹梅』の比較研究」の中で、松竹梅が3点セットで描かれるようになったのは南宋の時代(1127~1279年)からだと推定しています。

形と色彩が見事に調和

 いつ日本に伝来したのかは不明ですが、江戸時代には民間で流行していたことが分かっています。松竹梅の取り合わせは、形といい色彩といい見事に調和が取れています。このことが、日本人の感性にピッタリ合い、絵画だけでなく、文様、染色、生け花など様々な分野で取り上げられるようになりました。

松竹梅の意味合いは日中で異なる

 興味深いのは、松竹梅の意味合いが日本と中国で違う形で変化していったことです。韓博士によると、松竹梅は日本では「門松などの古来の風習と融合し、民族的、日常的な縁起物になった」が、中国では「繁栄や長寿を祈る意がしだいに薄くなり、専ら君子の高尚な美徳を象徴するもの」になりました。また「日本の松竹梅の中で『マツ』が主役であるのに対して、中国の松竹梅には『ウメ』が欠かせない植物である」とも指摘しています。日中文化の違いが、松竹梅のイメージに反映したのでしょう。

松は高くて、竹はそこそこで、梅は安い?

 松竹梅は三つの等級にも使われます。お寿司屋さんで「松」と注文すれば、大概はトロやウニの入った高価な握りが出てきます。日本料理では「特上」は松、「上」は竹、「並」は梅と名付けるお店が多く、逆の順番は少数派のようです。江戸時代は遊女の格付けにも使われました。最も格の高い太夫(たゆう)は「松」、次の天神は「竹」、その次の囲(かこい)は「梅」と呼ばれました。

もともとは松竹梅に序列はなかった

 松は梅よりも高くて上等ということになりますが、どうして松竹梅の順序になったのでしょうか?「語呂がいいから」という説があります。確かに「梅竹松(ばいちくしょう)」「竹梅松(ちくばいしょう)」ではしっくりきませんが、これは慣れということもあるでしょう。この他、「松は仙人が食べるという言い伝えがあるから、最高級になった」「お目出度いものとして定着した順番」など色々な説がありますが、どの説も、もともとは松竹梅に序列はなかったという点では一致しています。

みんなちがって、みんないい

 懐が寒くても、お寿司屋さんでは「並」とは注文しにくいものです。そうした消費者の心理に配慮して松竹梅が等級に割り当てられたとも言えますが、いやはや「並」の代わりに使われた梅にとっては迷惑な話です。金子みすゞの詩「私と小鳥と鈴と」にあるように、松竹梅は「みんなちがって、みんないい」ものです。順番にこだわらず、どれも大切にしていきたいものです。

※参考図書
「日中『松竹梅』の比較研究」(2011年、著者:韓☆=☆は雨冠に文の異体字=、出版:創価大学日本語日本文学会)
「開運!日本の伝統文様」(監修:水野惠司監修、著者:藤依里子、発行:日本実業出版社)
「永遠の詩 金子みすゞ」(著者:金子みすゞ、発行:小学館)
※参考サイト
「松竹梅/宝酒造株式会社」
「近松門左衛門/文化デジタルライブラリー」
「なぜ松竹梅でランクが違うのか?/10MTVオピニオン」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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