花コラム
花コラム第83回:平和の象徴・オリーブの高騰は世界への警鐘
第83回:平和の象徴・オリーブの高騰は世界への警鐘 2024.8.1 夏季五輪パリ大会は連日、熱戦が繰り広げられています。オリーブの冠は五輪の勝者の象徴とされていますが、そのオリーブが高騰しています。諸物価の値上げが相次ぐ中でも、オリーブオイルは倍以上になる製品もあり、値上がり率は際立っています。 オリーブと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは花ではなく枝や葉ではないでしょうか。第二次世界大戦の2年後の1947年に制定された国際連合の旗=写真右側=は地球をオリーブの枝が取り囲むデザインです。 モクセイ科の常緑高木のオリーブは観葉植物としても人気があります。5月から6月にかけて、白に黄色が混じった花径3mmほどの小さな花=写真右側=を咲かせます。 オリーブの実は9月から翌年2月頃が収穫期です。オイルは12月頃に完熟して黒くなった実=写真=を搾って作ります。 そのスペインは2022、23年と2年連続で、過去100年で最悪と言われる干ばつに襲われ、オリーブは歴史的な不作になりました。これが、オリーブオイル高騰の原因です。 高騰の原因はまだあります。日本はオリーブ消費量の9割以上をスペインなどヨーロッパからスエズ運河を通る紅海ルートで輸入していました。ところが、イスラエルとハマスの紛争にからみ、ハマスと連携するフーシ派が昨年11月から紅海=地図の水色=周辺で船舶を攻撃。このため、多くの船舶は紅海を避けて大きく左回りして迂回、南アフリカの喜望峰=地図赤印=沖を航行するようになり、海上輸送費が高騰しました。 国際情勢はパレスチナ問題だけでなく、ロシアのウクライナ侵攻、アフガニスタン紛争などいくつもの武力紛争が今もなお継続しています。緊迫化する台湾情勢にからみ、中国の駐日大使は「日本が台湾の独立に加担すれば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言。さらには北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本上空を通過するなどし、日本も国際紛争に無関係でいられなくなっています。 私たちは「戦後を生きている」と思い込んできました。しかし、最近の国際情勢を見れば、「もしかしたら日本は今、戦後であると同時に“戦前”なのかもしれない」という恐怖心すらわいてきます。パリ五輪はこれから佳境に入りますが、その間も世界各地では戦火はやまず、“平和の祭典”という五輪の形容詞は覚束ないものになってしまいました。 オリーブの価格は、気候、経済、国際情勢のいずれもが安定して初めて落ち着くものです。平和の象徴・オリーブの高騰は、平和が危機に瀕していると警鐘を打ち鳴らしていると言えるでしょう。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
国連旗とノアの方舟
この図案は旧約聖書の「ノアの方舟」に由来します。人間の邪悪な行いに怒った神は大洪水を引き起こします。信心深いノアや家族が乗った方舟は助かり、ノアが放ったハトはオリーブの枝をくわえて戻り、洪水が引き始めたことを知らせます。この話から、ハトとオリーブは平和の象徴になりました。たばこ「ピース」の箱の図案=写真左側=でもお馴染みです。愛らしい花は短命
何年か前の春先に“日本のエーゲ海”と言われる岡山・牛窓のオリーブ園=写真左側=に行きました。この時はまだ花は咲いていませんでした。職員の方は「開花期間は1週間ほどしかありませんが、愛らしい花です。散った後は、白い絨毯を敷いたようで、それも綺麗ですよ」と話していました。スペインが4割以上を生産
オリーブといえばイタリアを連想しますが、世界最大の生産国はスペインです。2021年は世界の総生産の4割以上はスペイン産でした。日本では小豆島や岡山などで生産していますが、生産量は世界の1%もありません。干ばつで歴史的な不作に
さらには2年前から始まった円安が高騰に拍車をかけています。1ユーロは昨年春は140円前後でしたが、今年7月には170円をつけ、輸入コストは大きく跳ね上がっています。紛争で海上輸送費が跳ね上がった
武力紛争はあちこちで継続
“戦前”かもしれないという恐怖心
オリーブの高騰が意味するもの
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「歴史の中の植物 花と樹木のヨーロッパ史」(著者:遠山茂樹、発行所:八坂書房)
「オリーブの歴史」(著者:ファブリーツィア・ランツァ、訳者:伊藤綺、発行所:原書房)
「2024年2月4日付日本経済新聞 スペインで非常事態宣言 過去100年最悪の干ばつ」
※参考サイト
「GLOBAL NOTE 世界のオリーブオイル生産量国別ランキング」
「スペインでオリーブオイルが高騰」
「スエズ運河ルートを回避!フーシ派の船舶攻撃 世界の物流混乱」
「内閣官房 国民保護ポータルサイト」
「世界で起こっている紛争問題」
「旧約聖書」