花コラム
花コラム第94回:ハイビスカス~「花の命は短くて…」は誤解されていた
第94回:ハイビスカス~「花の命は短くて…」は誤解されていた 2025.07.1 見るも鮮やかな赤や黄色の花びらが大きく見開いて、ハイビスカスが夏本番を告げています。アサガオ、ヒマワリ、サルスベリ…。夏の花は色々ありますが、ハイビスカスは明るい南国ムードを醸し出します。 ハイビスカスと言えば、フラダンスの女性の髪飾り=写真上側=でお馴染みです。2、30年前にハワイ旅行をした方なら、日本航空のホノルル便「スーパーリゾート・エクスプレス」の尾翼などに小鳥とともに大きく描かれていた赤い花=写真下側=を覚えていらっしゃるかもしれません。 ハイビスカスはアオイ科フヨウ属の常緑の低木で、世界の熱帯から亜熱帯まで広く栽培されています。沖縄では庭木や道路沿いの緑化樹としてもよく見かけます。花の大きさは花径5㎝ほどのものから人の顔の大きさのものまであり、赤のほかピンク、黄、白、オレンジなど花色が多いのも特徴です。 ハイビスカスの交配は20世紀初めからハワイで始められ、今では1万種ほどの園芸品種が作出されています。暑さに負けない、元気いっぱいの花というイメージがありますが、意外なことに大半の品種は咲いたその日に萎む「一日花」です。 《花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かれど》 《風も吹くなり 雲も光るなり 生きている幸福は 波間の鴎のごとく 漂渺(ひょうびょう)とただよひ 生きてゐる幸福は あなたも知ってゐる 私もよく知ってゐる 花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かれど 風も吹くなり 雲も光るなり》 この詩は「女性を花にたとえ、楽しい若い時代は短く、苦しい時が多かったみずからの半生をうたったもの」(goo辞書)と解釈されてきました。しかし、この解釈は《花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かれど》の2行に限ってのものでした。プレミアムフラワーの花コラム

ハワイや沖縄の花

ハワイの州花になっていますが、日本でも沖縄市や鹿児島県与論町など沖縄、鹿児島の多くの自治体の花にも指定されています。色とりどりの大小の花

元気いっぱいでも一日限りの命
詩の全容が分かる

まるで一日花の命の短さを嘆いているような有名な詩です。作家の林芙美子(1903~1951)=写真は尾道市にある芙美子像=が色紙などに好んで書いたものですが、出典ははっきりしていませんでした。
短い2行だけの詩ではないかとも言われていましたが、この詩の全容が16年前に分かりました。「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子さん(1893~1968年)の東京都内の遺族宅の書斎で、芙美子が原稿用紙に万年筆でしたためた詩が額に入れられて飾られていたのです。芙美子が親交のあった村岡さんに贈ったものと思われます。詩の全容は次の通りです。
※写真は「Dive! Hiroshima ひろしま公式観光サイト」から転載「多かりき」ではなく「多かれど」だった

『goo辞書』や『Weblio国語辞典』などでは《苦しきことのみ多かりき》と紹介されていますが、芙美子は《苦しきことのみ多かれど》と書いています。有名な言葉でも、間違って言い伝えられていることがあります。芙美子の詩もそうだったのでしょう。
※写真は芙美子がしたためた詩嘆くだけでなく、幸福も詠った詩だった

詩全体を通して読むと、芙美子は短く苦しい人生をいたずらに嘆いているのではありません。《風が吹き、雲が光る》世界で生きる幸せをも詠っていたのです。個性が強く、奔放に生きた芙美子は誤解されることもあったと言われますが、彼女が書いた詩もまた誤解されていたことになります。
自らの短い命を知ってか知らでか、ハイビスカスは今日も明るく、美しく咲いています。◇
※参考図書
「NHK趣味の園芸 ハイビスカス」(著者:小川恭弘、発行所:NHK出版)
「2009年9月6日付け中国新聞」
「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」(著者:村岡恵理、発行所:マガジンハウス)
※参考サイト
「レファレンス協同データベース」
「Dive! Hiroshima ひろしま公式観光サイト」
「アロハプログラム」
「AIRLINERS」













