花コラム
花コラム 第38回:新内閣に贈られた胡蝶蘭~花言葉のような政治を
2020.10.1 第38回:新内閣に贈られた胡蝶蘭~花言葉のような政治を 日本のリーダーが7年8か月ぶりに変わり、菅内閣が発足しました。大臣就任をお祝いする胡蝶蘭(コチョウラン)が東京・永田町界隈や大臣の地元の事務所などに次ぎ次ぎと運び込まれる映像がテレビで流れました=写真は2020年9月17日付け読売新聞朝刊=。胡蝶蘭は慶事や弔事の定番の贈り物と言えるでしょう。
ラン科コチョウラン属の胡蝶蘭は東南アジアの熱帯、亜熱帯の高温多湿の地域が原産で、日本には明治時代に伝わりました。当時はごく一部の上流階級が開花期の5~6月だけ楽しめる希少な花でしたが、今では栽培技術が進み、一年中楽しめる花になりました。 学名はギリシャ語で「蛾のような」という意味のファレノプシス(Phalaenopsis)。日本では、その名の通り「蝶に似ている」ことから胡蝶蘭と名付けられました。胡蝶蘭の花言葉『幸福を運んでくる』は蝶が舞う姿から連想したものです。 白やピンクなどのペダル(花弁)が左右に大きく開く様は優美、豪華で清潔感に溢れています。花持ちが良く、鉢植えの花は条件が良ければ2、3か月は咲き続けます。さらには、花粉は飛び散りにくく、匂いもほとんどしません。飾っておくのには、良いこと尽くめ。胡蝶蘭が贈り物として人気があるのはうなずけます。 ラン科植物には、地上で生きる地生ランと樹木に取り付いて生きる着生ランの2種類があります。胡蝶蘭は鉢植えのものしか見たことがないという方が多いでしょうが、もともとは高い樹木に根を張る着生ランです。熟成した実から落ちた種子は地面の上では発芽せず、樹木の表皮のひび割れたような所に落ちたものだけが発芽し、その根は表皮を這うようにして育ちます。 胡蝶蘭は樹木に着生しますが、寄生する訳ではありません。水分は雨や霧から吸収します。少ない水分を出来るだけ蒸発させないよう、葉の形状を分厚く変えるなどして適応してきました。 空調完備の大臣室は、胡蝶蘭にとっては居心地の良い環境に違いありません。これから長く咲き続ける胡蝶蘭を大臣の皆さんが見て英気を養い、国民に『幸福を運んでくる』政治に専念して頂きたいものです。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
原産地は熱帯地域
蛾と蝶
蝶は昼間に活動する綺麗な昆虫、蛾は夜間に活動する地味な色合いの昆虫というイメージがあります。しかし、生物分類学ではいずれも同じチョウ目(鱗翅目=りんしもく)に含まれます。地味な色合いの蝶もいれば、美しい羽根を持った蛾もいます。「綺麗な胡蝶蘭を蛾に例えるなんて」と驚くことはないようです。贈り物に打って付けの花
地上ではなく樹木に根を張る
木に胡蝶蘭を生ける着生栽培もありますが、一度は原産地で樹木に着生して咲いている自然の胡蝶蘭を見てみたいものです。
乾燥に強く、寒さに弱い
胡蝶蘭は生い立ちからして、乾燥に強く、寒さには弱い花なのです。胡蝶蘭にとっての室内での適温は18~25度。水やりは1週間~10日に1回、鉢植えの表面の水苔が乾いてからコップ1杯ほどの水を与える程度でよいとされています。
『幸福を運んでくる』政治を
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「NHK趣味の園芸No.564 コチョウランはもっと楽しめる」(編集:NHK,NHK出版、発行:NHK出版)、「NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 コチョウラン」(著者:富山昌克、発行所:日本放送協会)、「コチョウラン 季節の手入れ」(著者:江尻光一、小島研二、発行所:家の光協会)
※参考サイト
「昆虫おもしろ話、実は奥深いチョウとガの違い(神保宇嗣/チョウ・ガ研究者)」
「原種胡蝶蘭の生息域と環境」
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