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プレミアムフラワーの花コラム

第102回:ツバキ~愛おしく感じる所以

2026.3.1

 梅の香が漂い、桜の芽が膨らみ始めました。穏やかな天気に誘われてぶらぶら歩くと、ツバキ(椿)がつややかな赤い花をつけていました。目立つ花ではありませんが、どこか懐かしく、愛おしいという気持ちが湧いてくる花です。

日本人に愛され、様々な作品に

 ツバキ科ツバキ属の常緑高木の椿は、秋から春にかけて赤のほか白やピンクの花を咲かせます。葉が厚い「厚葉木(あつばき)」、あるいは葉に艶がある「艶葉木(つやばき)」が転じて「つばき」になったと言われています。
 原産地は日本や韓国、中国などアジア東南部。昔から日本人に愛され、様々な作品に取り上げられてきました。日本書紀には堅い椿の木が武器になったことが記され、万葉集では9首の歌に椿が詠み込まれています。

「椿三十郎」「椿の庭」「五辯の椿」

 数々の映画や文芸作品でも、椿は重要な役回りで登場します。三船敏郎が主演した映画「椿三十郎」(1962年制作)では椿は襲撃の合図に使われ、祖母と孫娘の交流を描いたドラマ「椿の庭」(2020年公開)では祖母は椿の咲く庭を眺めながら亡くなります。
 山本周五郎の時代小説「五辯の椿」は、無垢の乙女が、亡き父を裏切って苦しめた淫乱な母と母の遊び相手の男を次々と殺して復讐する物語です。殺害現場には紅い椿の一片の花びらが残されます。椿は父親が愛した花。5枚の花びらは娘が復讐の対象にした5人を暗示しています。

欧州では「冬のバラ」

 椿は18世紀にヨーロッパへ伝わり、19世紀には「冬のバラ」として社交界でもてはやされました。椿の大流行を受けて、フランスの作家デュマ・フィスは1848年に小説『椿姫』を書き上げました。5年後、この小説をもとにヴェルディが作曲したのが傑作オペラ「椿姫(La Traviata)」です。

花から花へと飛び回る椿姫

 主人公の高級娼婦ヴィオレッタは椿を愛し、いつも椿の花を身に着けています。青年貴族アルフレードに愛を告白されると、椿の花を渡して「この花が枯れる頃にまたお会いしましょう」と約束します。そして有名なアリア「ああ、そはかの人か~花から花へ」では『死ぬまで快楽の花から花へと飛び回り 昼も夜も自由に新しい喜びに思いをはせるのよ♪』と歌い上げます。オペラは、結核を患ったヴィオレッタがアルフレードに見守られながら亡くなるところで幕を閉じます。

限りある生命を象徴する花

 椿はサクラのように咲き誇るのではなく、むしろ控えめに咲いて日本の暮らしに息づき、日本人の感性に深く結びついてきました。一方、ヨーロッパでは「冬のバラ」と言われるように、東洋の華やかな花と思われてきました。国が変われば花のイメージも変わってきます。しかし、洋の東西とも、椿が限りある生命の終わりを象徴しているという点では共通しています。
 春咲きの椿の開花期間は5~7日間と比較的短く、最後は花の付け根から丸ごと落ちる。こうした生態が、椿のイメージに関わっているようです。限りある生命だから、なおさら愛おしく感じる。椿が愛される所以でもあるのでしょうか。

※参考図書
「NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 ツバキ、サザンカ」(著者:桐野秋豊、箱田直紀、発行所:日本放送協会)
「五辯の椿」(著者:山本周五郎、発行所:角川春樹事務所)
「椿姫」(著者:デュマ・フィス、訳者:西永良成、発行所:角川文庫
「山の音」(著者:川端康成、発行所:新潮社)

※参考サイト
「椿姫(La Traviata)第一幕 アリア(ヴィオレッタ)『そは彼の人か~花から花へ』」
「婦人画報デジタル 椿の花言葉」
「映画.com椿三十郎」
「映画.com 椿の庭」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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