第101回:クリスマスローズ~名は体を表さず 2026.2.1 野や山に咲く花はめっきり少なくなり、モノトーンの光景が繰り広げられています。そんな冬枯れの季節に、クリスマスローズはそっと彩りを添えています。 クリスマスローズはキンポウゲ科ヘレボルス属(クリスマスローズ属)の多年草です。ローズの名前がついていますが、バラの仲間ではなく、クレマチスやアネモネなどの仲間です。ヘレボルスは正式な名前(学名)で、白や赤、黄、紫、緑、灰色など多彩な花=写真=を咲かせます。花びらのように見える部分は花弁ではなく、萼片(がくへん)。葉の一部が変化して色づいたものなので散りにくく、2~3か月もの間、鑑賞できます。 最寄りの園芸店をのぞくと、店頭の一番目立つところに「クリスマスローズ」の特別コーナー=写真=が設けられていました。10種類近くの花が並べられていましたが、見た目は「違う品種の花では?」と思うほどバラバラです。種で増やすので、色や形、模様が安定しません。同じような花が咲かないというのが、この花の大きな特徴です。おまけに耐寒性があって育てやすいとあって、人気が高いというのも頷けます。 原産地はヨーロッパ。花の歴史は古く、世界薬用植物百科事典には「紀元前1400年には精神病の治療に使われていた」と記されています。学名のヘレボルスは、ギリシャ語の「ヘレン(殺す)」と「ボア(食べ物)」が語源です。葉や根茎に毒があり、摂取すると嘔吐や腹痛、下痢、呼吸麻痺、精神錯乱、心停止などをひき起こします。昔は強心剤や下剤などとして使われこともありますが、今では毒性が強過ぎるので薬としては使われていません。 クリスマスの名前が付いているのに、クリスマスの頃には余り見かけません。花の盛りはクリスマス・シーズンが過ぎた1月から4月にかけてです。どうして名前と花期がずれているのでしょうか? それにしても、これほど名前と実態が合わない花は珍しいのではないでしょうか。「クリスマス」と「ローズ」を組み合わせた名前の花なのに、クリスマスの頃には殆ど見かけず、バラ科の花でもない。名前が人や物の実体を表していることを「名は体を表す」と言いますが、この花に関しては名は体を表していません。それなのに、クリスマスローズの名前は違和感なく受け入れられています。それだけ魅力があり、普及しているということなのでしょう。 寒風の中でうつむき加減に、ひっそりと佇む姿から、クリスマスローズは“冬の貴婦人”とも言われます。この愛称の方は、名は体を表しているようです
※参考図書 元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper
in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。プレミアムフラワーの花コラム
バラではない

色、形、模様はバラバラ

花の歴史は古い
花の盛りはクリスマス・シーズンが過ぎてから

原産地のヨーロッパでは「Christmas rose」は原種系のヘレボルス・ニゲルだけを指します。この花はクリスマスの頃にバラのような花が咲かせることから、クリスマスローズと名付けられました。江戸時代の後半に渡来しましたが、日本ではヘレボルス・ニゲルだけでなく、2月から4月にかけて咲くヘレボルス・オリエンタリスなども含めてクリスマスローズと呼ばれるようになりました。名前と実態が合わない

まさに“冬の貴婦人”
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「新版クリスマスローズ」(著者:横山直樹、発行所:誠文堂新光社)
「もっとクリスマスローズ NHK趣味の園芸」(編集人:阿川峰哉、発行所:NHK出版)
「世界薬用植物百科事典」(原著:アンドリュー・シェヴァリエ、出版社::誠文堂新光社)
「すごい毒の生きもの図鑑」(監修:船山信次、発行所:中央公論新社)
※参考サイト
「グリーンファームラボ」
「LOVEGREEN」
「家庭画報.com 春に咲く花なのにクリスマスローズというのはなぜ?」
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コラムライターのご紹介
福田徹(ふくだ とおる)
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。






















