第88回:縁起の良い干支の名の植物たち 2025.01.1 2025年が明けました。今年は団塊の世代の全員が75歳以上になり、人口の5人に1人が後期高齢者になります。社会保障費が増大する一方で労働力が不足し、経済成長が鈍化するのではないかという「2025年問題」が始まりました。 お正月に付き物のお酒。そのお酒をいっぱい飲む人は「うわばみ(蟒蛇)」と言われます。蟒蛇は大蛇を指す言葉です。大酒飲みが、獲物を大量に丸呑みする大蛇にたとえられました。この名前が、そのままつけられたのが「ウワバミソウ(蟒蛇草)」=写真左側=です。 ヒロハヘビノボラズ(広葉蛇上らず)という説明文のような名前の植物もあります。その名前の通り、葉=写真左側=が広く、枝=写真右側=には蛇が登れないような刺があることが名前の由来です。メギ科メギ属の落葉低木で、5~6月に香りの良い、黄色い小さな花をつけます。東京、鳥取、宮崎など8都県で絶滅危惧種に指定されている希少な植物です。 サトイモ科テンナンショウ属の多年草のマムシグサ(蝮草)は、まだら模様の茎=写真左側=がマムシに似ていることから、この名前が付けられました。晩春に開花、秋には赤色のトウモロコシのような実=写真右側=をつけます。 バラ科キジムシロ属の多年草ヘビイチゴ(蛇苺)=写真=はあぜ道や湿った草地でよく見かけます。ヘビがいそうな所に生育し、ヘビが食べると思われていたことが、名前の由来です。 蛇は古くから豊穣の神として信仰され、脱皮する姿から「復活と再生」を象徴する縁起の良い動物とされてきました。とはいえ、多くの人はあのニョロニョロした姿は苦手で、不意に見かけると驚いて逃げることでしょう。 元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper
in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。プレミアムフラワーの花コラム
今年の干支は、繁栄や財運をもたらすと言われる巳(へび)。縁起の良い干支が「2025年問題」に打ち勝ちますようにとの願いを込めて、今回は「蛇」の字のつく草本を集めてみました。大酒飲みのウワバミソウ
名前からは、おどろおどろしい姿を連想しますが、見た目はごく普通の山菜です。別名はミズ。イラクサ科ウワバミソウ属の多年性植物で、大蛇がいそうな沢沿いや湿地で生えていることからウワバミソウと呼ばれるようになりました。クセのない味で、どんな調理にも合う“山菜の王様”とも言われています。
葉の形状は、大蛇がとぐろを巻いているようにも見えます。6月から7月にかけて、紫がかったピンク色の鮮やかな花=写真右側=をつけます。説明文のような名前
“植物界のマムシ”
有毒植物で、球根の汁などに触れた手は炎症を起こし、汁を誤って口にすると下痢、嘔吐などの症状が現れ、時には心臓麻痺で死亡します。まさに“植物界のマムシ”です。毒々しくても毒はないヘビイチゴ
地面をはうツルから茎を伸ばし、黄色い花を咲かせ、実をつけます。実は毒々しい赤色をしており、毒があるのではと言われていましたが、実際は人が口にしても大丈夫です。私も子供の頃に食べたことがありますが、スカスカした感じで、美味しくはありませんでした。「蛇」の植物を探してみよう
ヘビに出くわしたくありませんが、「蛇」の字が付いた植物なら怖くはありません。他にもジャニンジン(蛇人参)、ジャケツイバラ(蛇結茨)、ジャノヒゲ(蛇の髭)、ジャヤナギ(蛇柳)など色々とあります。今年は干支にちなんで、折につけて探してみようと思っています。◇
※参考サイト
「倉敷市立自然史博物館 植物のページ 干支(ヘビ)にちなんだ植物」
「山菜採りシリーズ16(ウワバミソウ)」
「ヒロハヘビノボラズ 岡山理科大学」
「愛媛の植物図鑑」
「松江の花図鑑」
「季節の花300」
「日本のレッドデータ検索システム」
「国立科学博物館 ヘビイチゴ」
「おたより本舗年賀状」
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福田徹(ふくだ とおる)
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。