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花コラム

花コラム第53回:今年こそ~ロウバイの不思議な力で

プレミアムフラワーの花コラム

2022.01.1

花コラム第53回:今年こそ~ロウバイの不思議な力で

 ロウバイ(蠟梅)は不思議な花です。種々の花が咲き乱れる季節は目立たない花木=写真=で、気を引くことは殆どありません。ところが、1月のこえを聞くと俄然、存在感を放ちます。他の花に先がけて、爽やかな香りを漂わせ、半透明のような美しい黄色い花を咲かせて、新しい年の息吹きを運んできます。

雪中の四花

 ロウバイは高さ2~5mになる落葉広葉樹で、1月から2月にかけて花をつけます。中国ではウメ、スイセン、サザンカとともに、冬を彩る貴重な花として「雪中の四友」と呼ばれ、文人画に好んで描かれています。日本には江戸時代に渡来しました。

蝋(ろう)細工?あるいは蜜蝋?

 名前は、旧暦の臘月(ろうげつ)・12月にウメのような形の花を咲かせ、ウメのような強い香りを放つことに由来するという説があります。しかし、ウメはバラ科バラ属、ロウバイはロウバイ科ロウバイ属で、分類学的には違うものです。
 この他、花が蝋(ろう)細工のようだから。さらには、花弁がミツバチの作る蜜蝋(みつろう)のような光沢、質感をしているからーとも言われていますが、花を見ていると、どの説にも頷いてしまいます。

文人の愛した花

 ロウバイを詠った俳句や短歌は数えきれないほどあります。有名なところでは…。
 《蠟梅や雪うち透(す)かす枝の丈(たけ)》(芥川龍之介)
 《蠟梅を透けし日射しの行方なし》(後藤比奈央)
 《蠟梅の香の一歩づつありそめし》(稲畑汀子)
 《蠟梅の老いさびし香のほのぼのとわが枕べを清くあらしむ》(窪田空穂)
 文人は、この透き通るような花に美しさ、清々しさ、清らかさを感じ取ったのでしょう。

掛け軸の前にロウバイ

 夏目漱石の「永日小品」の中の「懸物(かかりもの)」にもロウバイが登場します。
 《妻に先立たれた老人が石碑を立ててやろうと決心します。お金がないので先祖伝来の大切な掛け軸を好事家に売り、立派な石碑を誂えました。その後、掛け軸が気になり、好事家のところに見せてもらいに行くと、掛け軸は茶室に飾られ、その前には透き通るようなロウバイが活けてありました。老人は「おれが持っているよりも安心かもしれない」と倅(せがれ)に言いました。》
 石碑の身代わりとなって売られていった掛け軸は、ロウバイの花が活けられたことによって報われました。ロウバイには、有難い、不思議な力があるようです。

コロナ禍の終息を先見

 花言葉は「慈しみ」「ゆかしさ」。花の少ない季節に、うつむき加減に花を咲かせることにちなみます。さらに「先導」「先見」。他の花より一足早く開花することからの連想でしょう。
 ロウバイは、その有難い、不思議な力と慈しみで「今年こそコロナ禍は終息する」と先見しているーと思いたいものです。

※参考図書
「定本 漱石全集」(著者:夏目金之助、発行所:岩波書店)
「花をめぐる物語 尾崎左永子の章」(著者:尾崎左永子ら、発行所:かまくら春秋社)

※参考サイト
「みんなの趣味の園芸 NHK出版」
「暦生活 蠟梅」
「歳時記 蠟梅」
「蠟梅の俳句」
「花言葉‐由来」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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