花コラム
花コラム 第58回:ドクダミ~あばたもえくぼ
2022.06.1 第58回:ドクダミ~あばたもえくぼ 何となく悪いイメージを持っていたが、付き合ってみると好い人だった——ということがあります。知れば知るほど良い所が見えてきて、どうして悪く思っていたのか不思議に思うこともあります。花で言えば、ドクダミがそうでした。 ドクダミは高さ10~20cmの多年草の草本で、初夏から夏にかけて直径2、3㎝ほどの小さな白い花を咲かせます。日陰の湿り気のあるところを好み、全国各地の道端や空き地、林などで群生しています。前回にご紹介したハナミズキと同じように、花びらのように見えるのは花弁ではなく4枚の総苞片(花の付け根の葉)で、花は中央の黄色い突起した部分だけです。 ネットの検索エンジンの検索窓にキーワードを打ち込むと、続いて入力する言葉をAIが予測して自動的に表示します(サジェスト機能)。試しにヤフーで「ドクダミ」と打ち込むと、真っ先に「駆除」という言葉が出てきました。ドクダミの駆除方法を調べる人がいかに多いかということです。どうしてドクダミを駆除したいと思う人が多いのでしょうか? 第一の理由はドクダミの臭いにあるようです。葉茎だけでなく花にも匂いがあり、抜いたり傷つけたりすると悪臭がすると、多くの本に書いてあります。 ヤフーのサジェスト機能で3番目に出てきたのは「効用」でした。ドクダミの効用を調べる人も多いのです。 ドクダミの薬効について記した本も数多くあります。「食べる薬草事典」(著者:村上光太郎)によると、蒸し焼きにして軟膏にすれば腫物、吹き出物などの膿の吸い出しや湿疹、にきび、切り傷、打ち身などの治療に効果があります。煎じて服用すれば利尿、駆虫、緩下剤となり、蓄膿症や膀胱炎、夜尿症、冷え性、高血圧、風邪、皮膚病、頭痛、糖尿病などいくつもの疾患に効きます。さらには浴湯料にすると腰痛、痔疾、冷え性、美肌などに効果があると記しています。薬効は十どころではありません。 ドクダミ茶を飲むと、血液がサラサラになり、肌が綺麗になるので「べっぴんさんのお茶」と呼ばれています。花の咲く今頃がお茶を作るのに適していると聞き、散歩がてらに道端で咲いているドクダミを摘んで帰りました。確かに独特の臭いはしますが、そんなに嫌な臭いではありません。良く洗って、5日間ほどかけて乾燥させて茶葉を作りました=写真左側=。 ドクダミの効用をあれこれ調べた後なので、好きになると相手の欠点も長所のように見える「あばたもえくぼ」の状態になっているのかもしれません。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
今が盛りの花
駆除したいと思う人が多い
悪臭と書いてある
次に、地下茎を張り巡らせて繁茂するので、抜いても抜いても生えてくること。
さらには「ドクダミ」という名前も印象を悪くしているようです。一説には、臭いや生えている場所から何となく「毒があるのでは」と思われ、毒を溜める「毒溜め」と書かれるようになったと言われています。しかし、実際は正反対。毒を抑える毒下しの薬効があります。「悪い性質や習慣などを改め直す」という意味の「矯める」の字を使って、「毒矯め」と書く説の方が正しいでしょう。貝原益軒は「十薬」と呼ぶ
江戸時代の本草学者で儒学者の貝原益軒は著書「大和本草」=写真=の中でドクダミのことを『十種ノ薬ノ能アリトテ十薬ト号スト云(十種の薬効があるので、十薬と呼ぶことにした)』と書いています。ドクダミはゲンノショウコ、センブリとともに日本の三大民間薬の一つにもなっています。薬効は十どころではない
ドクダミ茶を作って飲んでみた
淹れたドクダミ茶=写真右側=は、見た目は茶色っぽい普通のお茶と変わりません。ほのかにゲンノショウコか養命酒のような味がしましたが、それがまた身体に良さそうな感じがして、気に入りました。あばたもえくぼ?
薄暗いジメジメした地で小さな白い明かりを灯すようにして咲くドクダミは、なんとも健気で、愛すべき花に思えてきました。ドクダミというセンスの悪いネーミングをやめて、貝原益軒が推奨した「十薬」を花の正式な名前に出来ないものでしょうか。◇
「食べる薬草事典」(著者:村上光太郎、発行所:農村漁村文化協会)
「身近なハーブ・野菜で からだ美人になる自然派レシピ」(監修:小林妙子、村上志緒、発行所:家の光協会)
「自然食バイブル」(著者:松田友利子、発行所:KKベストセラーズ)
※参考サイト
「福岡県立大学看護学研究紀要 ドクダミの殺菌・抗菌効果の解析」(芋川浩、山井ゆり)
「暦生活 ドクダミ」
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