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花コラム

花コラム 第65回:葉牡丹~日本人の審美眼が生み出した

プレミアムフラワーの花コラム

第65回:葉牡丹~日本人の審美眼が生み出した

2023.1.1

 2023年が明けました。コロナ禍はひきずったままですが、街中を歩くと、やはり改まった気持ちになります。その新春ムードを盛り上げるのに、葉牡丹(ハボタン)が一役買っています。
 子供の頃は葉牡丹を見て「どうして野菜が飾ってあるのだろう?」と思ったものです。キャベツの一種ぐらいにしか見えなかったのでしょう。

葉が牡丹のように綺麗だから葉牡丹

 アブラナ科アブラナ属の葉牡丹は花の少ない冬場の貴重な花として重宝がられ、門松の添え物にもされています。もっとも、花と言っても、この季節に私たちが見ているのは本当の花ではありません。白や赤、紫、桃、クリーム色などに色付いた葉です。葉が牡丹のように綺麗に見えることから、葉牡丹と名付けられました。本当の花は4、5月頃に咲きます。黄色い、小さな、可愛い花=写真=ですが、殆ど見向きもされません。

野菜として渡来

 葉牡丹の原種は地中海沿岸で食用として栽培されていたケールです。江戸時代前期までにオランダを経由して日本に渡来し、当初はオランダ菜と呼ばれました。キャベツやブロッコリーの原種もケールなので、子供の頃に葉牡丹を「キャベツの一種」と思ったのは、あながち間違いではありませんでした。
 本草学者・貝原益軒は『大和本草』(1708年)=写真=の中で「花は淡黄で大根の花のごとし。味良し。」と書いていることから、当時は日本でも野菜として食べられていたと思われます。

食用から観賞用に

 その95年後に本草学者・小野蘭山が著した『本草網目啓蒙』=写真=には「種樹家多く裁ゆ。……冬春交紫色に変じ葉皆相抱いて重葉、紫牡丹の如し。」とあります。この頃には、葉牡丹は商品として栽培されるようになりました。さらに、葉牡丹の味については触れず、姿かたちだけを記していることから、葉牡丹は食用ではなく、観賞用になっていたことがうかがわれます。
  ※種樹家=草木の栽培を生業とする人、裁(う)ゆ=土に植えて、育てること

地方それぞれ違う形に進化した

 その後は観賞用の花として品種改良が進みました。江戸時代から東京で改良されてきた丸葉系=写真左側=はキャベツのように丸い葉をしています。名古屋で育てられた縮緬(ちりめん)系=写真中央=は葉に細かなチリメンがあり、フリルのようになっています。大阪で育てられた大阪丸葉系=写真右側=は丸葉系と縮緬系の交雑種で、葉の縁が波打つフリルになっています。この他、様々な品種があり、葉牡丹は地方それぞれの好みに応じて進化してきました。

祖先の審美眼が生み出した

 ケールの葉の形や色に美しさを感じ取り、観賞用に栽培したのは江戸時代の粋人でした。食用の植物を観賞用に仕立て上げる例は少なく、外国ではケールはもっぱら食用か薬用として栽培されています。
 日本産の葉牡丹は海外に輸出され、Flowering kale(花のケール)、Ornamental kale(観賞用ケール)などと呼ばれていますが、海外のサイトでは「IS ORNAMENTAL KALE EDIBLE?(葉牡丹は食べられるか?)」といった書き込みも見られます。ケールは食べ物という意識が強いのでしょう。葉牡丹は私たち祖先の審美眼が生み出した賜物と言えるでしょう。
 ちなみに葉牡丹は食べられますが、苦くて美味しくはありません。それに、食用としては栽培されていないので、農薬がかかっていることがあり、注意が必要です。

日本人の美意識の結晶

 葉牡丹には日本人の美意識が凝縮されている。そう思って、新春の街を彩る葉牡丹を眺めると、野菜ではなく、まさしく綺麗な花に見えてきました。
 葉牡丹の紅白並べ福を呼ぶ(石川政男)

「花の名随筆12 ハボタンの文化史 今西弘子」(発行所:作品社)
「花をめぐる物語 太田治子の章 葉牡丹」(発行所:かまくら春秋社)

※参考サイト
「国立国会図書館デジタルコレクション」
「描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌」
「GARDENER’S PATH」「Garden.eco」
「みんなの趣味の園芸 NHK出版」
「歳時記 葉牡丹1」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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