花コラム
花コラム 第72回:オジギソウ~命をつなぐ必死のパフォーマンス
第72回:オジギソウ~命をつなぐ必死のパフォーマンス 2023.8.1 植物は茎や葉が成長したり、花が開いたり閉じたりして、少しずつ動いています。しかし、ゆっくりした動きなので、見た目にはじっとしているように見えます。それが、オジギソウは見た目にもはっきり動くのですから、子どもたちに人気があるのは当然です。 マメ科ネムノキ亜科のオジギソウはブラジル原産で、世界中に帰化。日本へは江戸時代に渡来したといわれています。草丈は30~50㎝、暑さに強い植物で、沖縄などで自生しています。 オジギソウの研究は、イギリスの自然科学者チャールズ・ダーウィン(1809~1882年)の時代にまで遡りますが、まだまだ解明されていないこともあります。葉の付け根などに、小さく膨らんだ葉枕(ようちん)という器官=写真=があります。ここに入っている水が刺激を受けると一気に細胞の外に出ていき、葉を閉じたりする(膨圧運動)ということは分かっていました。しかし、どうして、そのような動きをするのかは分かっていませんでした。 埼玉大学や基礎生物学研究所などの研究グループは、薬理学やゲノム編集の技術を使って、お辞儀をしないオジギソウを作り出して、バッタなどの草食性昆虫の食害実験を行いました。その結果、昆虫は葉を動かすオジギソウより、動かさないオジギソウをより多く食べることが明らかになりました。こうした研究を受けて、昨年11月、「葉の動きが草食性昆虫から身を守る役割がある」などと発表しました。 夏になると、葉の付け根に、ピンク色の球状の可愛らしい花をつけます。花のように見えるのは、おしべとめしべで、花びらは殆ど見えません。風や昆虫によって受粉し、花が咲き終わると実ができ、やがて実の中の種が地面に落ちて芽を吹きます。 オジギソウの葉が植物とは思えないような動きをしているのは、ひとえに夏場に無事に花を咲かせるためとも言えるでしょう。精一杯速く動いて、バッタを威嚇しているように見えます。あるいは、「私を食べないで」とひたすら、お辞儀をして哀願しているようにも見えます。 しかし、所詮は植物。触られ過ぎると、弱って動かなくなります。まさしく、命をリレーするための必死のパフォーマンスなのです。 ※参考図書プレミアムフラワーの花コラム
最寄りの図書館のホームページで、オジギソウをキーワードにして検索すると、12冊の本が見つかりました。いずれも児童向けの図書でした。かくいう私も、子供の頃は面白がってオジギソウをよく触ったものです。
眠り草、羞恥草、含羞草の別名も
特徴は何と言っても葉が動物のように動くことです。葉に触れると、わずか数秒で先端から本を閉じるように順番に閉じていき、最後に葉全体がガクンと垂れ下がります。お辞儀をしているように見えることから、オジギソウの名前が付けられました。葉が閉じる姿は眠るようにも、恥ずかしがっているようにも見えます。そこで、「眠り草(ねむりぐさ)」「羞恥(しゅうち)草」「含羞(がんしゅう)草」という別名も生まれました。葉の付け根に動く器官
※写真はホームページ「埼玉大学 研究トピックス」から転載草食性昆虫から身を守るため
花が次世代へと命をつなぐ
オジギソウは葉の動きばかりが注目されますが、花は次世代へと命をつなぐ大切な役割を果たしているのです。威嚇、それとも哀願?
人も外敵?
オジギソウにとって外敵は草食性昆虫だけでなく、むやみにパフォーマンスを強要する人間もそうなのかもしれません。面白がって触っていたことが、少し後ろめたくなってきました。◇
「すごい植物最強図鑑」(監修:田中修、発行所:中央公論新社)
「なぜ?どうして?科学のお話し」(総合監修:大山光晴、発行所:学研プラス)
「ほんとうはびっくりな植物図鑑」(監修:稲垣栄洋、発行所:SBクリエイティブ株式会社)
「いのちおふしぎがおもしろい!すごい植物図鑑」(監修:稲垣栄洋、発行所:カンゼン)
※参考サイト
「埼玉大学 研究トピックス オジギソウは、どのようにして、何のために葉を動かすのか? 2022/11/15」
「NHK 埼玉NEWS WEB オジギソウの葉が動く仕組みを解明」
「植物の育て方図鑑 オジギソウの育て方」
「オジギソウ 日本大百科全書」
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