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花コラム

花コラム 第52回:シネラリア~気の毒な名前の花たち

プレミアムフラワーの花コラム

2021.12.1

第52回:シネラリア~気の毒な名前の花たち

 花の種類が少なくなる冬場から早春にかけてが、シネラリアの出番です。ところが、近くのホームセンターの園芸売り場で「シネラリアはありますか?」と尋ねると、若い店員さんは「えっ?」と小首をかしげました。

見ていて飽きない花

 キク科ペリカルリス属のシネラリアは、赤、紫、青、ピンク、白、黄など色とりどりの光沢のある花をびっしりと咲かせます。咲き方も花びらが一重に咲く「一重咲き」、同心円を基調とした模様のように咲く「蛇の目咲き」、絞り染めの模様のように咲く「絞り咲き」など様々で、見る人を飽きさせません。

サイネリアに言い換えられた理由

 北アフリカやカナリア諸島が原産で、明治時代に渡来しました。英語名は「Florist's Cineraria」、和名は英語名をそのまま片仮名に書き直した「シネラリア」です。ところが、この名前は「死」を連想させるとして、次第に敬遠されるようになりました。その代わりに「ci」を「シ」から「サイ」に読み替えて、サイネリアと呼ばれることが多くなりました。
 園芸売り場でも「サイネリアは?」と言い換えると、ようやく通じました。店員さんは経験が浅かったのかもしれませんが、流通現場でもサイネリアの名前の方が定着しているようです。

国によっては全く違うイメージに

 サイネリアの花言葉は「いつも快活」「よろこび」。寒い冬から春にかけて、元気いっぱいに明るい花を咲かせることに由来します。イギリスなどでは、「この花のように元気になってください」という祈りを込めて、病気のお見舞いに贈られることが多いそうです。
 ところが日本では、この花をお見舞いやお祝いの贈り物にするのは良くないとされています。「シネラリア」という“本名”を思い浮かべるからでしょう。同じ花でも、国によって全く違うイメージになってしまいます。

ヘクソカズラという可哀そうな名の花

 シネラリアは、たまたま英語名が日本語で負のイメージになった訳ですが、意図して付けられた名前なのに、「これでは花が可哀そう」というものもあります。
 アカネ科ヘクソカズラ属のヘクソカズラは可憐な白い花をつけますが、名前を聞くと眉をひそめてしまいます。「屁糞葛」と漢字で書けば、なおさらです。葉や茎を傷つけると悪臭を放つことから、こんな名前がつけられました。

不名誉な名前にダメ押し

 この花は、万葉集でも詠まれています。
 《そう萊(きょう)に延(は)ひおほとれる糞葛絶ゆることなく宮仕へせむ》高宮王
 古庄ゆき子・別府大学名誉教授によると、歌の意味は「カワラフジにまといつき、広がり乱れている糞葛のツルが絶えないように、絶ゆることなく、いつまでも宮仕えをしよう」というものです。昔は「糞葛」だったのが、今では頭に「屁」まで付けられたのですから、花にとっては堪ったものではありません。
 さすがに、こんな名前では可哀そうだと思われたのでしょう。「サオトメバナ(早乙女花)」という別名も付けられました。可愛らしい花のイメージは、田植えをする乙女に重なります。

よりによって盗人?

 この他、ヌスビトハギ(盗人萩)という名前の多年草もあります。細長い茎に淡紅色の小さな花=写真右側=をつけます。
 盗人は足音を立てないように足の裏の外側だけを地面につけて歩くと言われています。一説には、果実=写真左側=が盗人の足跡に似ているのが由来ということです。また、種子が知らないうちに人にくっ付くのが由来とも言われています。「よりによって、盗人に結び付けなくてもいいのに」と思ってしまいます。

心無い名前を悲しんでいる花も

 考えてみれば、花の名前は人が花に断りなしに、言わば勝手に付けたものです。胡蝶蘭のように美しい、綺麗な名前の花もあれば、気の毒な名前の花もあります。花に心があるのなら、心無い名前を悲しんでいる花もあるでしょう。

※参考図書
「四季の花図鑑」(発行者:菅国典、発行所:木馬書館)
「あんまりな名前」(著者:藤井青銅、発行所:扶桑社)

※参考サイト
「みんなの趣味の園芸 NHK出版」「花言葉⁻由来」
「楽して楽しむガーデニング サイネリア(シネラリア)の特徴と育て方!」
「屎葛の歌―万葉集十六の歌をよむ―古庄ゆき子」
「育て方ボックス シネラリアの育て方」
「日本国語大辞典 盗人萩」「ヘクソカズラ 鹿児島県薬剤師会」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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