花コラム
花コラム 第56回:ヒマワリ~ウクライナに心を重ねて
2022.04.1 第56回:ヒマワリ~ウクライナに心を重ねて ロシアに侵攻されたウクライナに心を重ねて、半世紀前の映画が全国各地の映画館で緊急上映されています。イタリアの名優ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが第二次世界大戦で引き裂かれた妻と夫を演じた「ひまわり」(1970年)です。 上映している映画館が遠いので、DVD=写真は「50周年HDレストア版」=をレンタルして観ました。 ヒマワリ畑の撮影地は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)から南約500㎞にあるヘルソン州=地図の赤印=でした。在ウクライナ日本国大使館のホームページには「今でも7月下旬頃には一面に咲き誇るヒマワリを見ることができます」と書いてあります。しかし、一帯は先月にロシア軍の攻撃を受け、見る影もない地に変わり果ててしまいました。 1970年代に発売されたビデオの説明書には「(映画に出てくるひまわり畑は)ウクライナと信じておられる方には申し訳ないが、モスクワのシェレメチェボ国際空港の近くだった。」と書いてありました。 ウクライナの国花はセイヨウカンボク=写真左=とスミミザクラ=同右=とされていましたが、今ではヒマワリが国を象徴する花になっています。そのヒマワリの絵を描いてSNSに投稿して、ウクライナに心を寄せようという運動が広がっています。アメリカではロシアに抗議するデモの参加者がヒマワリの花を手にしていました。 実はヒマワリはウクライナとともにロシアの国花でもあります。太陽に向かって咲く底抜けに明るい花が、侵攻した国と侵攻された国のいずれをも象徴するというのは、何とも皮肉な話です。 映画の最後は物悲しいテーマ曲が流れる中、ヒマワリ畑がスクリーンいっぱいに映し出され、〈Fin〉(終わり)の文字が浮かび上がりました。 ※参考サイトプレミアムフラワーの花コラム
ヒマワリ畑の下には無数の人々が
ジョバンナはロシア戦線へ送り出されて行方が分からなくなった夫アントニオを探して、戦いのあったヒマワリ畑を訪れます。そこで、地元の人がジョバンナに語り掛けます。「ご覧なさい。ヒマワリの下にイタリア兵や捕虜になったロシア人が埋まっています。そして無数のロシアの農民、老人、女、子供も…」。
イタリアやロシアをウクライナと言い換えれば、今の状況と重なってきます。数え切れないほどの家族が引き裂かれた
ウクライナでは18~60歳の男性は戦闘要員として国内にとどまり、女性、子供、老人の一部が国外へ避難しています。映画の二人のように引き裂かれた家族は数えきれないほどいるでしょう。何を言っても構わない
同大使館によると、ビデオが発売された当時はウクライナは旧ソビエト連邦の中の一つの共和国でした。この時代、同連邦は外国人がモスクワのクレムリンから80㎞以上離れた所へ行くのを禁じていました。そこで観光客が映画のロケ地を見ようとしてクレムリンから1000㎞以上離れたウクライナに行かないよう、同連邦が虚偽の説明をしたということです。その証拠に、映画の中でジョバンナに話しかけた地元民の言葉はウクライナ語でした。
今回のウクライナ侵攻に関して、プーチンやロシア当局が「ウクライナが戦争を始めた」などと虚偽の発表を繰り返すのを聞いていると、「目的達成のためなら、何を言っても構わない」というのが、かの国の考え方なのかなと思ってしまいます。ヒマワリが抗議の象徴に
底抜けに明るい花なのに
平穏な暮らしと美しい自然の<Fin>
侵攻が一日も早く〈Fin〉となり、ヒマワリのように明るい明日がウクライナの人々に訪れますように!◇
「在ウクライナ日本国大使館」
「侵攻が続くウクライナに思いを馳せる名作『ひまわり』50周年HDレストア版、緊急公開!映画.com」
「“ひまわりの絵を描きウクライナに心を寄せよう”動き広がる‐NHK.JP」
「国花 Wikipedia」
「グーグルマップ」
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