花コラム
花コラム 第63回:皇帝ダリア~足元を固め、周囲の変化に適応して
2022.11.1 第63回:皇帝ダリア~足元を固め、周囲の変化に適応して 冷気が漂い、花が少ない季節になると、ひときわ背の高い皇帝ダリアが直径20㎝近くものピンクや紫色の大輪の花を咲かせます。辺りを見下ろすようにして咲く姿は貫禄十分、まさに皇帝です。 キク科多年草のダリアはメキシコ、中米、コロンビアの原産で、品種は3万を超え、世界で最も品種の多い花と言われています。豪華な大輪の花や可憐な小輪。花の色は白、赤、黄、オレンジ、ピンク、紫。花びらが丸く集まって咲くポンポン咲=写真左側=、平たく幅広い花びらが重なるデコラティブ咲=写真中央=、細い花びらが固まって咲くカクタス咲=写真右側=。大きさや色、咲き方は様々で、同じ花とは思えないほどバラエティーに富んでいます。 数多いダリアの中で最も目立つのは、“ダリアの王様”とも呼ばれる皇帝ダリアです。大半のダリアの草丈は1mほどですが、皇帝ダリアは総じて高く、中には5、6mの花もあります。民家の2階以上に相当する高さです。初めて皇帝ダリアを見た時は「こんなに高くて、よく立っていられるな?」と驚きましたが、茎を見て「なるほど」と思いました。 緑色で直径は4、5㎝、節があります。竹のように見えますが、触ってみると竹よりはるかに硬く、カシやケヤキに近い感じです。茎が木に化ける「木化(木質化)」という現象を起こしているのです。 ダリアは7月頃から咲き始めますが、皇帝ダリアは11月から12月にかけて咲きます。真打ちが最後に登場するようにダリアのトリを務めますが、もったいぶって遅く咲く訳ではありません。 ダリアは日が短く、夜が長くなると花を咲かせる短日植物です。単に暗い時間(暗期)が長くなればいいというものではなく、暗期が一定以上、連続しなければ花をつけません。中でも皇帝ダリアは、他のダリアより長い暗期を必要とします。このため、近くに街灯や家の灯りがあると、日が長いと勘違いして花芽をつけないこともあります。光に関しては、皇帝はなかなか神経質なようです。葉がセンサーとなって、微妙な明暗を感じ取っているのです。 絶対的な力を持つ皇帝はドンと構え、少々のことでは動じないように見えます。その実、皇帝たるものは足元をしっかり固めて、周囲の変化に適応して初めて君臨することが出来るということでしょうか。 ※参考サイトプレミアムフラワーの花コラム
ダリアはバラエティに富んだ花
よく立っていられるな?
茎が木に化けた
解説書によると、木化は細胞壁にリグニンという物質が沈着して、組織が硬くなって起こります。木化したお陰で、皇帝ダリアは高く生長しても倒れず、地中の水を先端にまで効率良く運ぶことが出来るという訳です。こうなれば草花というより、“木に咲く花”というべきでしょうか。“木立ちダリア”の異名があるのも頷けます。皇帝ダリアがそびえ立つのは、強い足腰に支えられてのことでした。ダリアのトリに登場する
皇帝たるものは
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「農林水産・食品産業技術振興協会 ダリアのプロフィール」
「のうがく図鑑 『木に化ける』仕組みに迫る!宮崎大学農学部」
「Plantia ダリアの王様『皇帝ダリア』」
「環境研ミニ百科」
※参考図書
「みんなの趣味の園芸 ダリア NHK出版」
「宝塚市花 ダリア」(発行:宝塚市役所農政課)
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