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花コラム

花コラム 第66回:パンジーが微笑んで見える世の中に

プレミアムフラワーの花コラム

第66回:パンジーが微笑んで見える世の中に

2023.2.1

 人の顔のように見える模様を持つ魚「人面魚」はブームになったことがあり、その存在はよく知られています。それでは、人の顔のように見える模様を持つ草花「人面草」はご存じでしょうか?
 私も最近になって知ったのですが、人面草はパンジーの異名だそうです。言われてみれば、パンジーは人の顔に似ています。花の少ない今の季節、花壇や庭を彩るパンジーは様々な表情で私たちを和ませてくれます。

遊蝶花、胡蝶草、三色スミレ

 パンジーはスミレ科スミレ属の一年草です。原産地はヨーロッパで、江戸時代末期に日本に渡来しました。姿かたちは蝶々のようにも見えます。当時は「遊蝶花」「胡蝶草」などと呼ばれていました。
 年配の方には「三色スミレ」の方が馴染みがあるかもしれません。以前は、ほとんどの花が黄、紫、白色の三色咲きだったことから、この名前が付けられました。

思索にふけるパンジー

 品種改良が進み、今ではパンジーは何百種にも増え、毎年のように新しい品種が誕生しています。咲き方は八重咲き、フリル咲きなどがあり、色合いも豊富になったことから「三色スミレ」の名前はふさわしくなくなり、代わりに英語名「pansy(パンジー)」の名前が定着しました。
 パンジーが少し前に傾いて咲く様子は、人が思索にふけるように見えます。そこで、フランス語の「考え・思考・思想」を意味する「Pensée (パンセ)」にちなんで、パンジーと名付けられたと言われています。

庭や家まわりがキラキラ輝く

 10月頃から出回り、上手に育てれば半年以上も開花するので、冬から春にかけての園芸には欠かせないアイテムになっています。園芸の本には、パンジーを植えると「庭や家まわりがキラキラ輝く」と書いてあります。

「私にキスをして」という名前の花

 花によって模様は異なり、表情は豊かです。アメリカのF・スコット・フィッツジェラルドの小説「the Great Gatsby(グレート・ギャッツビー)には「Kiss me at the garden gate(門のところで私にキスをして)」という名前の植物が出てきます。どの植物を意味するのかについては諸説がありますが、一説によるとパンジーの別名だそうです。
 どうしてパンジーの別名になったのでしょうか?これも一説ですが、パンジーの右側と左側の花びらがキスをしているように見えるからだといいます。

困ったような顔、悲しそうな顔

 性格を検査する方法にロールシャッハ・テスト=写真=があります。インクの染みを見て、何を想像するかで思考過程などを推定するというものです。パンジーの模様も、このテストに似ています。
 今の私の目には、パンジーはキスをしているようには映りません。むしろ、困ったような、悲しそうな顔をしたパンジーが多いように見えます。模様のない「のっぺらぼう」の花も、心なしか憂いを漂わせているとさえ感じます。

パンジーが微笑んで見える世の中に

 当初は2、3年で終息するだろうと言われたコロナ禍は、丸3年が過ぎて4年目に入りました。国際情勢は緊迫の度を高め、物価高は生活をむしばみ始めています。
 見る人の気持ちによって、同じ花からでも受ける印象は違ってきます。パンジーの表情は、私たちの心情を映し出していると言えるでしょう。
 誰の目にもパンジーが微笑んで見える世の中になるのは、いつのことでしょうか?

「奥峰子の わが家の花壇を美しく作るコツ」(著者:奥峰子、発行所:主婦の友社)
「花色を楽しむ パンジー・ビオラ250種 庭や家回りがキラキラ輝く」(監修者:大柿忠幸、平塚弘子、発行所:成美堂出版)
「趣味の園芸 パンジー&ビオラで元気になる!」(発行:NHK出版)

※参考サイト
「人面草(じんめんそう)」
「愉快な人面草」
「ヤサシイエンゲイ」
「ロールシャッハ・テスト」
「kiss-me-at-the-gateどんな花―英検一級をめざす英語」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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花コラム 第65回:葉牡丹~日本人の審美眼が生み出した

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第65回:葉牡丹~日本人の審美眼が生み出した

2023.1.1

 2023年が明けました。コロナ禍はひきずったままですが、街中を歩くと、やはり改まった気持ちになります。その新春ムードを盛り上げるのに、葉牡丹(ハボタン)が一役買っています。
 子供の頃は葉牡丹を見て「どうして野菜が飾ってあるのだろう?」と思ったものです。キャベツの一種ぐらいにしか見えなかったのでしょう。

葉が牡丹のように綺麗だから葉牡丹

 アブラナ科アブラナ属の葉牡丹は花の少ない冬場の貴重な花として重宝がられ、門松の添え物にもされています。もっとも、花と言っても、この季節に私たちが見ているのは本当の花ではありません。白や赤、紫、桃、クリーム色などに色付いた葉です。葉が牡丹のように綺麗に見えることから、葉牡丹と名付けられました。本当の花は4、5月頃に咲きます。黄色い、小さな、可愛い花=写真=ですが、殆ど見向きもされません。

野菜として渡来

 葉牡丹の原種は地中海沿岸で食用として栽培されていたケールです。江戸時代前期までにオランダを経由して日本に渡来し、当初はオランダ菜と呼ばれました。キャベツやブロッコリーの原種もケールなので、子供の頃に葉牡丹を「キャベツの一種」と思ったのは、あながち間違いではありませんでした。
 本草学者・貝原益軒は『大和本草』(1708年)=写真=の中で「花は淡黄で大根の花のごとし。味良し。」と書いていることから、当時は日本でも野菜として食べられていたと思われます。

食用から観賞用に

 その95年後に本草学者・小野蘭山が著した『本草網目啓蒙』=写真=には「種樹家多く裁ゆ。……冬春交紫色に変じ葉皆相抱いて重葉、紫牡丹の如し。」とあります。この頃には、葉牡丹は商品として栽培されるようになりました。さらに、葉牡丹の味については触れず、姿かたちだけを記していることから、葉牡丹は食用ではなく、観賞用になっていたことがうかがわれます。
  ※種樹家=草木の栽培を生業とする人、裁(う)ゆ=土に植えて、育てること

地方それぞれ違う形に進化した

 その後は観賞用の花として品種改良が進みました。江戸時代から東京で改良されてきた丸葉系=写真左側=はキャベツのように丸い葉をしています。名古屋で育てられた縮緬(ちりめん)系=写真中央=は葉に細かなチリメンがあり、フリルのようになっています。大阪で育てられた大阪丸葉系=写真右側=は丸葉系と縮緬系の交雑種で、葉の縁が波打つフリルになっています。この他、様々な品種があり、葉牡丹は地方それぞれの好みに応じて進化してきました。

祖先の審美眼が生み出した

 ケールの葉の形や色に美しさを感じ取り、観賞用に栽培したのは江戸時代の粋人でした。食用の植物を観賞用に仕立て上げる例は少なく、外国ではケールはもっぱら食用か薬用として栽培されています。
 日本産の葉牡丹は海外に輸出され、Flowering kale(花のケール)、Ornamental kale(観賞用ケール)などと呼ばれていますが、海外のサイトでは「IS ORNAMENTAL KALE EDIBLE?(葉牡丹は食べられるか?)」といった書き込みも見られます。ケールは食べ物という意識が強いのでしょう。葉牡丹は私たち祖先の審美眼が生み出した賜物と言えるでしょう。
 ちなみに葉牡丹は食べられますが、苦くて美味しくはありません。それに、食用としては栽培されていないので、農薬がかかっていることがあり、注意が必要です。

日本人の美意識の結晶

 葉牡丹には日本人の美意識が凝縮されている。そう思って、新春の街を彩る葉牡丹を眺めると、野菜ではなく、まさしく綺麗な花に見えてきました。
 葉牡丹の紅白並べ福を呼ぶ(石川政男)

「花の名随筆12 ハボタンの文化史 今西弘子」(発行所:作品社)
「花をめぐる物語 太田治子の章 葉牡丹」(発行所:かまくら春秋社)

※参考サイト
「国立国会図書館デジタルコレクション」
「描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌」
「GARDENER’S PATH」「Garden.eco」
「みんなの趣味の園芸 NHK出版」
「歳時記 葉牡丹1」

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福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
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花コラム 第64回:花を贈り、捧げる心

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2022.12.1

第64回:花を贈り、捧げる心

 街角にクリスマスソングが流れ始めました。「あの人には何がいいかな?」。愛する人、親しい人への贈り物をあれこれ考えるのは、この季節の楽しみの一つです。店頭やネットには様々な商品があふれ、迷うことが多いのですが、贈り物、捧げ物の定番といえば、やはり花に尽きるでしょう。
 花は贈られても、実生活に役立つことはありません。時が来れば、枯れてしまいます。それでも、安らぎ・癒しのひと時をもたらしてくれる花は、私たちにとって掛け替えのないものです。いつから花は人々の身近にあったのでしょうか?

古来、人々は花と共に

 1960年代にイラク北部のシャニダール洞窟で、ネアンデルタール人の遺骨が見つかりました。そばに数多くの花粉の化石があったことから、「4万年以上前から死者に花を手向ける習慣があった」と大きなニュースになりました。その後、「花粉は風に運ばれてきたか、小動物に付着していたものでは」という異論も出ましたが、花が古代人の身近にあったことは間違いありません。
 西暦79年のヴェスヴィオ火山の大噴火で地中に埋もれた古代都市ポンペイの遺跡からは壁画「花を摘むフローラ(花の精)」=写真、国立ナポリ考古美術館所蔵=が発掘されました。いつの世も、花と少女は絵になるようです。古来、人々は花と共に生きてきました。

花と宗教

 宗教においても、花はなくてはならない存在です。仏教では蓮は極楽浄土に咲く花とされています。イスラム教では白いバラはムハンマド、赤いバラは神アラーを表します。キリスト教では様々な場面で色々な花が登場します。
 キリスト教の価値観に基づいた教育方針を掲げる聖心女子学院では毎年12月、「ゆりの行列」という行事が催されます=写真=。原罪のすべての汚れから自由であった(無原罪)聖母マリアを祝って、児童や生徒が「マリア様、私の心の百合をお捧げします。生涯、清く保つことが出来ますように」とお祈りしながら、白いユリを捧げます。

クリスマスにまつわる言い伝え

 クリスマスにまつわる言い伝えも数多くあります。イエス様が生誕した時、貧しい少女がお祝いに駆け付けましたが、「私には贈るものがない」と泣いてしまいます。涙が土に落ちると、そこから真っ白なクリスマスローズ=写真左側=が咲きました。少女はその花を摘んで、イエス様に捧げました。
 クリスマスイブにメキシコの山間に住む貧しい少女はイエス様への贈り物が買えないので、教会に入るのをためらうと、天使の像が「私の羽根のまわりにある雑草を摘んで、持っていきなさい」とささやきました。少女が雑草をかかえて祭壇に向かって歩いていくと、雑草は真っ赤なポインセチア=写真右側=に変わりました。

花を贈り、捧げる心

 このような言い伝えは、贈り物や捧げ物の価値は金銭の多寡や物の値段で決まるのではない、感謝する純粋な気持ち・心が大切なのだと説いています。
 献金しないと不幸になるという脅迫観念を植え付け、借金をさせたり財産を処分させたりして貢がせ、信者の家族を不幸に追いやる宗教団体が問題になっています。花を贈ったり捧げたりする心とは、およそ無縁の話です。

※「ゆりの行列」の写真は不二聖心女子学院のホームページから転載。
※参考図書
「季節を彩る花物語『宗教と花』鈴木健久 2010年11月2日東京新聞夕刊」

※参考サイト
「兵庫県立 人と自然の博物館 障害のあったネアンデルタール人は幸せだったか?三谷雅純」
「ポンペイ壁画集⁻国立国会図書館デジタルコレクション」
「花コラム第4回『ポインセチアは心浮き立つ花』」
「花コラム第16回『クリスマスローズ~うつむいて咲く訳は』」
「不二聖心女子学院 学院ダイアリー」

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花コラム 第63回:皇帝ダリア~足元を固め、周囲の変化に適応して

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2022.11.1

第63回:皇帝ダリア~足元を固め、周囲の変化に適応して

 冷気が漂い、花が少ない季節になると、ひときわ背の高い皇帝ダリアが直径20㎝近くものピンクや紫色の大輪の花を咲かせます。辺りを見下ろすようにして咲く姿は貫禄十分、まさに皇帝です。

ダリアはバラエティに富んだ花

 キク科多年草のダリアはメキシコ、中米、コロンビアの原産で、品種は3万を超え、世界で最も品種の多い花と言われています。豪華な大輪の花や可憐な小輪。花の色は白、赤、黄、オレンジ、ピンク、紫。花びらが丸く集まって咲くポンポン咲=写真左側=、平たく幅広い花びらが重なるデコラティブ咲=写真中央=、細い花びらが固まって咲くカクタス咲=写真右側=。大きさや色、咲き方は様々で、同じ花とは思えないほどバラエティーに富んでいます。

よく立っていられるな?

 数多いダリアの中で最も目立つのは、“ダリアの王様”とも呼ばれる皇帝ダリアです。大半のダリアの草丈は1mほどですが、皇帝ダリアは総じて高く、中には5、6mの花もあります。民家の2階以上に相当する高さです。初めて皇帝ダリアを見た時は「こんなに高くて、よく立っていられるな?」と驚きましたが、茎を見て「なるほど」と思いました。

茎が木に化けた

 緑色で直径は4、5㎝、節があります。竹のように見えますが、触ってみると竹よりはるかに硬く、カシやケヤキに近い感じです。茎が木に化ける「木化(木質化)」という現象を起こしているのです。
 解説書によると、木化は細胞壁にリグニンという物質が沈着して、組織が硬くなって起こります。木化したお陰で、皇帝ダリアは高く生長しても倒れず、地中の水を先端にまで効率良く運ぶことが出来るという訳です。こうなれば草花というより、“木に咲く花”というべきでしょうか。“木立ちダリア”の異名があるのも頷けます。皇帝ダリアがそびえ立つのは、強い足腰に支えられてのことでした。

ダリアのトリに登場する

 ダリアは7月頃から咲き始めますが、皇帝ダリアは11月から12月にかけて咲きます。真打ちが最後に登場するようにダリアのトリを務めますが、もったいぶって遅く咲く訳ではありません。

 ダリアは日が短く、夜が長くなると花を咲かせる短日植物です。単に暗い時間(暗期)が長くなればいいというものではなく、暗期が一定以上、連続しなければ花をつけません。中でも皇帝ダリアは、他のダリアより長い暗期を必要とします。このため、近くに街灯や家の灯りがあると、日が長いと勘違いして花芽をつけないこともあります。光に関しては、皇帝はなかなか神経質なようです。葉がセンサーとなって、微妙な明暗を感じ取っているのです。

皇帝たるものは

 絶対的な力を持つ皇帝はドンと構え、少々のことでは動じないように見えます。その実、皇帝たるものは足元をしっかり固めて、周囲の変化に適応して初めて君臨することが出来るということでしょうか。

※参考サイト
「農林水産・食品産業技術振興協会 ダリアのプロフィール」
「のうがく図鑑 『木に化ける』仕組みに迫る!宮崎大学農学部」
「Plantia ダリアの王様『皇帝ダリア』」
「環境研ミニ百科」

※参考図書
「みんなの趣味の園芸 ダリア NHK出版」
「宝塚市花 ダリア」(発行:宝塚市役所農政課)

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花コラム 第62回:秋明菊~美しい花は美しい名を持つ

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2022.10.1

第62回:秋明菊~美しい花は美しい名を持つ

 名は体を表す。名前はありのままの姿を表すものですが、美しい花の多くにも美しい名前が付けられています。胡蝶蘭(コチョウラン)、勿忘草(ワスレナグサ)、君影草(キミカゲソウ=スズラン)、杜若(カキツバタ)、紫陽花(アジサイ)、篝火草(カガリビソウ=シクラメン)、一人静(ヒトリシズカ)…。
 これからの季節に咲く美しい名の花と言えば、秋明菊(シュウメイギク)=写真=が思い浮かびます。

しみじみ眺めていたい花

 秋明菊は草丈は70㎝ほどで、一重咲きと八重咲があります。まず先端に一輪咲き、続いてその脇に一輪ずつ順番に咲いていきます。一重咲きは白やピンクの5枚の花弁があるように見えますが、これは花弁ではなく萼(がく)が変化したものです。
 作家の宇江佐真理氏は著書の中で「派手さはないが、しみじみ眺めていたくなる」花だと評しています。

『秋冥菊』から『秋明菊』へ

 秋明菊は中国から渡来しました。江戸幕府の五代将軍・徳川綱吉が「生類憐みの令」を制定する4年前の1681年に刊行された日本最古のガーデニング書「花壇綱目(かだんこうもく)」=写真=には、すでに秋明菊の名が記載されています。
 中国では、この世のものとは思えないほど美しい「秋に咲く黄泉の国の菊」という意味で『秋冥菊』と書かれていました。『冥』には「黄泉の国・冥土」の他に「光がない・暗い」という意味があります。日本では反対の意味の漢字『明』に置き換えて『秋明菊』と書き換えられました。秋に咲く明るい菊。縁起をかついだのでしょう。これで印象はころっと変わりました。

数多くの通称の中でも秀逸

 花には学名の他に姿かたち、自生地、来歴などから様々な通称が付けられます。秋明菊は渡来後、京都・貴船一帯で自生したことから「貴船菊」の別名があります。さらには「秋牡丹」「しめ菊」「加賀菊」「越前菊」「唐(から)菊」「高麗菊」「秋芍薬(しゃくやく)」「紫衣(しえ)菊」…。数多くの通称を持つ花ですが、優雅さということでは秋明菊の右に出る名前はありません。秋明菊は秀逸の名前です。

菊ではなく金鳳花の仲間

 数ある菊の中でも秋明菊は際立って優雅な花というイメージがありますが、実は秋明菊は菊の仲間ではありません。キンポウゲ科イチリンソウ(アネモネ)属の多年草です。ちなみに英語名は「Japanese anemone(アネモネ)」で、「chrysanthemum(菊)」の単語は使われていません。
 秋明菊の科名のキンポウゲ=写真=は黄金色の綺麗な花で、漢字では「金鳳花」と書きます。花を鳳凰(ほうおう)に見立てて、この名が付けられました。やはり美しい花は美しい名を持っているものです。

物事には例外が付き物

 そのキンポウゲにも別名があります。「ウマノアシガタ(馬の足形)」です。江戸時代は馬は蹄鉄でなく草鞋(わらじ)(※1)を履いていました。この草鞋がキンポウゲの葉の形に似ていることが、別名の由来と言われています。
 それにしても、お世辞にも綺麗な名前とは言えません。コラムの冒頭で「美しい花には美しい名前が付けられる」と書きましたが、補足します。物事には例外が付き物です。

(※1) 歌川広重の「浮世絵動物園 名所江戸百景」(太田記念美術館のホームページから転載)
※参考図書
「糸車」(著者:宇江佐真理、発行所:集英社)

※参考サイト
「みんなの趣味の園芸」(NHK出版)
「ガーデニングの図鑑」
「GARDEN STORY 秋の風情を感じる優雅さ 秋明菊の特徴、花言葉、育て方」

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花コラム 第61回:ペンタスは希望を叶える花

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2022.09.1

第61回:ペンタスは希望を叶える花

 終わりの見えないコロナ禍、執拗に続くロシアのウクライナ侵攻、ジワジワと押し寄せる物価高‥‥。今年の夏は、八方ふさがりの状況に記録的な猛暑と水害が追い打ちをかけました。晴れない気持ちで歩いていると、道端の小さな花壇で少しホッとする花に出合いました。

花言葉に託したい

 常緑多年草の「ジャノヒゲ(蛇の髭)」を取り囲むようにして、赤、白、ピンク色のペンタスが咲いています。直径が1㎝にも満たない小さな星形の花が数十輪まとまって咲く様は、色とりどりの小さな傘を並べたようです=写真=。
 ペンタスの花言葉は「希望が叶う」「願い事」。今まさに、この花言葉に託したいことは一杯あります。

「5」が語源の花

 アカネ科ペンタス属のペンタスは熱帯アフリカ、アラビア半島が原産の多年草で、草丈は30~50cmほどになります。
 学名「Pentas」は古代ギリシャ語の「5」を意味する「pente」が語源です。花びら(花弁)が5枚あることにちなみますが、花の4割近くは5枚の花びらを持つ5弁花と言われています。数多い五弁花の中で、わざわざ5弁にちなむ学名がペンタスに付けられたのはどうしてでしょうか?

星に願いを

 5弁花の中でも、ペンタスほど綺麗な五角形をした花はそうそうありません。古来、人々は星の輝きを五角形に図案化してきました。ペンタスを見て、多くの人がまず五角形を思い浮かべ、ついで星を連想したということではないでしょうか。中国では五星花と呼ばれています。
 星を見れば、願いをかけたくなります。そこで「希望が叶う」などの花言葉が生まれました。ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌は「星に願いを(When You Wish upon a Star)」でした。

同じクラスターでも大違い

 花がまとまって咲く様子は私には「傘を並べたよう」に見えましたが、英名では何とも壮大な表現になります。「Egyptian star cluster(エジプトの星団)」。「cluster」には群れ、集団、房、塊などの意味があります。同じ単語でも、新型コロナウィルス感染症のクラスターとは大違いです。

育てるのは楽?

 初めて花壇のペンタスを見かけてから1か月ほど経ちますが、ペンタスは「今が盛り」とばかりに元気に咲き続けています。園芸の本には花期は5~10月と書いてあります。暑さに強い、実に生命力のある花です。「これだけ強い花なら育てるのは楽かもしれない」と思いました。

予期しない返事

 先日、花壇を管理している近くの方が、しゃがみ込んで手入れをしているのを見かけました。「丈夫な花ですね」と声をかけると「そうですね。でも、手入れはそれなりに大変なんですよ」という予期しない返事が返ってきました。

施肥、切り戻しに花がら摘み

 ペンタスは長く咲くので、堆肥は多めに施す必要があるそうです。成長が早く、見た目のバランスが悪くなるので、伸びすぎた枝や茎を切り取って整えなければなりません。この剪定(切り戻し)をすることによって風通しが良くなり、ペンタスは元気になって、病害虫から身を守ることになります。花がしおれてきたら、花がらを摘み取ります。もちろん、水やりも忘れてはいけません。

何事も日頃が大事

 こうした丹念な手入れをすることによって、ペンタスは何度も新芽を出し、新しい花を咲かせます。「丈夫だから育てるのは楽かもしれない」と思ったのは、大きな間違いでした。
 丈夫な寿命の長い花も、日頃の丹精を込めた手入れがあって初めて綺麗に咲きます。「希望を叶える」のには、日頃の地道な努力が欠かせないように……。

※参考図書
「NHK趣味の園芸 2022年8月号」
「自然界にひそむ『5』の謎」(著者:西山豊、出版社:筑摩書房)

※参考サイト
「Plantia」
「魅る魅るガーデニング」
「花びらはなぜ5枚なの/自然界の摂理」
「メディアサイト ヒラメキ工房」
「世界の民謡・童謡 星に願いを」

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花コラム 第60回:鬼灯と風船唐綿~花が主役の座を奪われた

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2022.08.1

第60回:鬼灯と風船唐綿~花が主役の座を奪われた

 今回のコラムのタイトルは、漢字の読み方のクイズのようになりました。「ホオズキ」と「フウセントウワタ」と読みます。鑑賞植物の中には花が脇に追いやられ、実や葉、茎などが主役の座を奪うものがあります。夏の風物詩・ホオズキとフウセントウワタの場合は…。

ご先祖様が帰ってこられる目印

 ホオズキと言えば、真っ先に赤い、小さな紙風船のような袋がぶら下がった姿が思い浮かびます。これを提灯に見立て、お盆に帰ってこられるご先祖様の目印になるようにと、玄関や仏壇周りに飾る風習があります。お盆の間、ご先祖様の魂はホオズキの中に宿ると言われています。「鬼灯」と書くのは、空中に漂う火の玉「鬼火」からの連想と思われます。

「ほおずき市」が3年ぶりに開催

 子供の頃に袋の中にある赤い実の中身をくり抜いて、ホオズキ笛を作ったことがあります。私はなかなか音を出せませんでしたが、近所のお姉さんが「ギュッ、ギュッ」と上手に鳴らしていたのを思い出します。
 コロナ禍で中止になっていた東京・浅草の縁日「ほおずき市」は先月、3年ぶりに開催され、多くの人で賑わいました。買って帰って、ホオズキ笛を作って遊んだ親子もいたことでしょう。

開花期と観賞期が違う訳は?

 ホオズキはナス科ホオズキ属の一年草または多年草で、原産地は東アジア。赤い袋は花の付け根にある萼(がく)が果実を包み込んで、丸く膨らんだものです。
 花期を調べると「開花期は6~7月、観賞期は8~9月」と『みんなの趣味の園芸』(NHK出版)に書いてありました。開花期と観賞期が違うのは、ホオズキの観賞対象は花ではなく、花が散った後に赤く色づく袋状の萼ということです。
 ホオズキの花と言われても、すぐに思い浮かばない方もいるかもしれません。直径1~2cmの淡いクリーム色の五弁の花です=写真=。

白いホオズキ?

 ホオズキを探して近くの公園を歩いていると、白っぽい紙風船のような袋がぶら下がっている花木を見かけました。「えっ、白いホオズキ?」と遠目に思い、近づいて見ると薄緑色のフウセントウワタでした。袋には柔らかいトゲが付いており、ハリセンボンのようにも見えます。
 カガイモ科フウセントウワタ属のフウセントウワタは、アフリカ南部原産の一年草です。先の本では「開花期は6月下旬~9月、観賞期は8月~9月(果実)」と記されており、ホオズキと同じように観賞対象は花ではなく、薄緑の袋状になった果実です。

風船のような外国産の綿

 フウセントウワタは、直径1.5cm程度の白っぽい花を数輪束ねたようにして咲かせます=写真左側=。花が咲いた後、果実が膨らんで袋状になり、熟すと割れて、中から綿毛の付いた種=写真右側=が出てきます。原産地では、この綿毛を集めて、クッションの詰め物にしたと言われています。
 風船のような外国産の綿ということで、「風船唐綿」の漢字が当てはめられました。「唐」は中国の王朝の名ではなく、渡来してきたという意味合いです。

花にちなまない花言葉

 ホオズキの花言葉は、袋は大きいのに、中は空洞で種も小さいことから「偽り」「ごまかし」。フウウセントウワタの花言葉は、袋の中に詰まった綿毛がはじけて飛んでいく様子から連想して「いっぱいの夢」「隠された能力」。どちらも花言葉なのに、花にちなんだものではありません。ここでも、花は脇役に押しやられています。

主役に遠慮して控えめに

 ホオズキとフウセントウワタの花は愛らしくて、可憐な花です。しかし、申し合わせたように、小ぶり、地味な色で、下向きに咲きます。まるで主役の萼や果実に遠慮しているかのようです。赤や薄緑の目立つ袋さえなければ、もっと注目されるだろうにーと思うと、少し気の毒になってきました。

※参考図書
「みんなの趣味の園芸 ホオズキ」(NHK出版)
「埼玉の童話」(編集:日本児童文学者協会『県別ふるさと児童館』編集委員会、発行所:リブリオ出版)

※参考サイト
「ガーデニングの図鑑」
「replant.tokyo」
「花言葉.net」
「仏壇のあるリビング お盆のほおずきの飾り方」
「風船みたいな実の植物」

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福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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花コラム 第59回:サボテン~さらに短くなった“花様年華”

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2022.07.1

第59回:サボテン~さらに短くなった“花様年華”

 近くの神社の境内を通りかかると、木の根元がピンク色に彩られていました。何だろうと思って近づくと、根元に生えたサボテンが花を咲かせていました。
 棘のある茎の部分から細い棒状のものが15㎝ほどニョキニョキと伸びて、その先端で直径6、7㎝の色鮮やかな花が開いています。細長い花びらを束ねたような形をしています。
「刺々しいサボテンから、こんな綺麗な花が」と驚きました。

石鹸代わりだったシャボテン

 サボテンの自生地は南北アメリカ大陸で、日本には16、7世紀頃にポルトガルから渡来しました。当時はポルトガルではサボテンの樹液が石鹸代わりに使われていたことから、ポルトガル語のシャボン(石鹸)がサボテンの語源になったーというのが定説です。サボテンは半世紀前まではシャボテンと呼ばれ、1959年に開園した「伊豆シャボテン動物公園」=写真=は当時の名前を園名にしています。

様々な形が2000種以上も

 西部劇では腕を上へ突き出したようなサワロサボテン=写真左側=がお馴染ですが、この他、球状や平らなものなど形は様々。2000種以上はあると言われています。
 図鑑と照らし合わせてみると、境内にあったサボテンは球状の桃色短毛丸でした。翌日も境内に見に行きました。しかし、残念なことに花はもう萎んでいました=写真右側=。1日しか咲かない一日花だったのです。

5輪の黄色い花

 がっかりして散歩を続けると、今度は車道沿いの緑地帯で違う種類のサボテンが黄色い花を5輪つけていました。大きさは桃色短毛丸と同じぐらいですが、花びらの先端は切りそろえたようで、形はかなり違います。茎が団扇のような形をしているウチワサボテンです。写真を撮っていると、近くの方が「ここにサボテンなんかなかったのに、鳥が種を運んできたんでしょうかね。いつの間にか繁殖して、花まで咲かせたんですよ」と教えて下さいました。
 ウチワサボテンは繁殖力が強く、生態系への影響が大きいとして「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。時折り、街中でも見かけますが、花が咲いているのを見たのは初めてです。

花の命は短くて

 サボテンの花はなかなか咲かないと思っていたけど、そうでもないぞ。そう思ってキョロキョロしながら歩くと、道端や民家の軒先などで幾つかのサボテンが花をつけていました。白い大振りの花、黄色い小さな花、一つの茎に連なるようにして咲く桃色の花、ツクシが膨らんだような赤い花……。茎の形が異なるように、花の色も形も多彩です。
 サボテンの花期は短く、数時間からせいぜい2、3日しか咲いていません。なかなか花が咲かないのではなく、咲いているところに出くわす機会が少なかったということでしょう。

さらに短くなった“花様年華”

 肉厚の茎や根に水を貯めている多肉植物のサボテンは、砂漠のような乾燥したところでも育ちます。しかし、花を咲かせる時は内部に貯めた水だけでは足りません。雨が降る時を待って花を咲かせ、種を作って子孫を残します。
 梅雨時の花と言えば真っ先にアジサイが思い浮かびますが、サボテンも負けてはいません。サボテンは雨の中で、人生で最も美しい瞬間《花様年華》を迎えるのです。
 ところが、今年は梅雨入り後も雨は少なく、6月下旬から晴天が続くにつれて、サボテンの花も見かけなくなりました。ただでさえ短いサボテンの《花様年華》は、さらに短くなったようです。

愛され、憎まれる複雑な植物

 それにしても、固い表皮や棘に覆われた無骨な形の茎と美しい花は何ともアンバランスです。オーストラリアのサボテン栽培家ダン・トーレ氏は著書の中で次のように書いています。
 『美しいと感じる者もいれば、不快だと感じる者もいる。生き物ではないと考える者もいれば、生気にあふれていると考える者もいる。サボテンほど複雑で、愛され、憎まれる植物はほとんどない。』

※伊豆シャボテン動物公園の写真は同公園のホームページから転載。
※参考図書
「サボテンの文化誌」(著者:ダン・トーレ、訳者:大山晶、発行所:原書房)
「シャボテン新図鑑」(著者:シャボマニアック、出版社:日本文芸社)
「サボテン大好き」(著者:飯島健太郎、発行所:講談社)

※参考サイト
「【庭の花たち】とっても綺麗なサボテンの花が咲きました」
「Plantia」

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花コラム 第58回:ドクダミ~あばたもえくぼ

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2022.06.1

第58回:ドクダミ~あばたもえくぼ

 何となく悪いイメージを持っていたが、付き合ってみると好い人だった——ということがあります。知れば知るほど良い所が見えてきて、どうして悪く思っていたのか不思議に思うこともあります。花で言えば、ドクダミがそうでした。

今が盛りの花

 ドクダミは高さ10~20cmの多年草の草本で、初夏から夏にかけて直径2、3㎝ほどの小さな白い花を咲かせます。日陰の湿り気のあるところを好み、全国各地の道端や空き地、林などで群生しています。前回にご紹介したハナミズキと同じように、花びらのように見えるのは花弁ではなく4枚の総苞片(花の付け根の葉)で、花は中央の黄色い突起した部分だけです。

駆除したいと思う人が多い

 ネットの検索エンジンの検索窓にキーワードを打ち込むと、続いて入力する言葉をAIが予測して自動的に表示します(サジェスト機能)。試しにヤフーで「ドクダミ」と打ち込むと、真っ先に「駆除」という言葉が出てきました。ドクダミの駆除方法を調べる人がいかに多いかということです。どうしてドクダミを駆除したいと思う人が多いのでしょうか?

悪臭と書いてある

 第一の理由はドクダミの臭いにあるようです。葉茎だけでなく花にも匂いがあり、抜いたり傷つけたりすると悪臭がすると、多くの本に書いてあります。
 次に、地下茎を張り巡らせて繁茂するので、抜いても抜いても生えてくること。
 さらには「ドクダミ」という名前も印象を悪くしているようです。一説には、臭いや生えている場所から何となく「毒があるのでは」と思われ、毒を溜める「毒溜め」と書かれるようになったと言われています。しかし、実際は正反対。毒を抑える毒下しの薬効があります。「悪い性質や習慣などを改め直す」という意味の「矯める」の字を使って、「毒矯め」と書く説の方が正しいでしょう。

貝原益軒は「十薬」と呼ぶ

 ヤフーのサジェスト機能で3番目に出てきたのは「効用」でした。ドクダミの効用を調べる人も多いのです。
 江戸時代の本草学者で儒学者の貝原益軒は著書「大和本草」=写真=の中でドクダミのことを『十種ノ薬ノ能アリトテ十薬ト号スト云(十種の薬効があるので、十薬と呼ぶことにした)』と書いています。ドクダミはゲンノショウコ、センブリとともに日本の三大民間薬の一つにもなっています。

薬効は十どころではない

 ドクダミの薬効について記した本も数多くあります。「食べる薬草事典」(著者:村上光太郎)によると、蒸し焼きにして軟膏にすれば腫物、吹き出物などの膿の吸い出しや湿疹、にきび、切り傷、打ち身などの治療に効果があります。煎じて服用すれば利尿、駆虫、緩下剤となり、蓄膿症や膀胱炎、夜尿症、冷え性、高血圧、風邪、皮膚病、頭痛、糖尿病などいくつもの疾患に効きます。さらには浴湯料にすると腰痛、痔疾、冷え性、美肌などに効果があると記しています。薬効は十どころではありません。

ドクダミ茶を作って飲んでみた

 ドクダミ茶を飲むと、血液がサラサラになり、肌が綺麗になるので「べっぴんさんのお茶」と呼ばれています。花の咲く今頃がお茶を作るのに適していると聞き、散歩がてらに道端で咲いているドクダミを摘んで帰りました。確かに独特の臭いはしますが、そんなに嫌な臭いではありません。良く洗って、5日間ほどかけて乾燥させて茶葉を作りました=写真左側=。
 淹れたドクダミ茶=写真右側=は、見た目は茶色っぽい普通のお茶と変わりません。ほのかにゲンノショウコか養命酒のような味がしましたが、それがまた身体に良さそうな感じがして、気に入りました。

あばたもえくぼ?

 ドクダミの効用をあれこれ調べた後なので、好きになると相手の欠点も長所のように見える「あばたもえくぼ」の状態になっているのかもしれません。
 薄暗いジメジメした地で小さな白い明かりを灯すようにして咲くドクダミは、なんとも健気で、愛すべき花に思えてきました。ドクダミというセンスの悪いネーミングをやめて、貝原益軒が推奨した「十薬」を花の正式な名前に出来ないものでしょうか。

※参考図書
「食べる薬草事典」(著者:村上光太郎、発行所:農村漁村文化協会)
「身近なハーブ・野菜で からだ美人になる自然派レシピ」(監修:小林妙子、村上志緒、発行所:家の光協会)
「自然食バイブル」(著者:松田友利子、発行所:KKベストセラーズ)

※参考サイト
「福岡県立大学看護学研究紀要 ドクダミの殺菌・抗菌効果の解析」(芋川浩、山井ゆり)
「暦生活 ドクダミ」

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花コラム 第57回:ハナミズキ~国と国の関係は移ろう

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2022.05.1

第57回:ハナミズキ~国と国の関係は移ろう

 サクラが散ると、入れ替わるようにしてハナミズキが咲き始めました。日本の街路樹で最も多いのはイチョウの約57万本、2番目はサクラの約52万本、3番目はケヤキの約49万本、そして4番目がハナミズキの約36万本です。5月中頃までは、白や赤、ピンクの花が街中を彩ります。

ミズキより花らしい花

 ミズキ科ミズキ属のハナミズキは北米原産の落葉樹。同じミズキ属のミズキ=写真の左側=よりも美しい、花らしいということで、ハナミズキ(花水木)=写真の右側=と名付けられました。花のように見えるのは花弁ではなく、花の付け根の葉(総苞片=そうほうへん)です。秋には紅葉や赤くなった果実なども楽しめ、観賞期間が長いのが特長です。

キリストが処刑された木

 英語名はdogwood(犬の木)。木の皮を煮詰めて、犬の皮膚病の薬にしていたというのが謂(いわ)れです。
 キリストが処刑された十字架に使われたという伝説もあります。ハナミズキは罪深い自分を恥じて、二度と処刑に使われないよう小さくなりました。高さは4~10mもある大きな木ですが、その前はもっと大きな巨大な木だったということでしょうか。4枚の花びらは十字架の形に変わり、キリストを打った釘の痕が花びらのくびれになったとも言い伝えられています。

日米の友情を示し合う

 サクラとハナミズキは花期をバトントスするだけでなく、日本とアメリカの友情を示し合う関係にもあります。
 日本とロシアが戦った日露戦争(1904~1905)はアメリカが講和に導きました。そのお礼の意味も込めて、1912年に東京市長だった尾崎行雄はサクラ(ソメイヨシノ)の苗木をアメリカに贈りました。世界的な花の名所・ワシントンD.C.のポトマック河畔のサクラ並木=写真※注1=のはじまりです。

友情交換の26年後に交戦

 その3年後、返礼としてワシントン市から東京市に贈られたのがハナミズキです。白い花の苗木40本、ピンク色の苗木20本が上野公園や日比谷公園などに植えられました。
 日本とアメリカは友情で結ばれたはずでしたが、それから26年後に太平洋戦争(1941~1945)が勃発。日米両国は約340万人(※注2)が亡くなるという壮絶な戦いを繰り広げました。

花には罪はない

 戦争中はアメリカではサクラを、日本ではハナミズキを「敵国の花だ」として根こそぎにしようという動きがありました。しかし、「花には罪はない」という花を愛する人々の思いが二つの花を守りました。ハナミズキの原木は今でも東京都立園芸高校に残っています=写真※注3=。

国と国との関係の移ろい

 花が季節と共に移ろうように、国と国の関係もその時々の状況、事情によって移ろっていきます。
 戦争が終わり、日米両国は今では同盟国となり、再びサクラとハナミズキのように友情を示し合う仲になりました。同じヒマワリを国花に掲げるウクライナとロシアはこの先、どのような関係になっていくのでしょうか。

「ハナミズキ」の歌に寄せて

 歌手・作詞家の一青窈さんの代表作「ハナミズキ」(2004年発売)は結婚式でよく歌われますが、恋愛の歌ではなく、アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)をテーマにしたものです。

ミサイルでなく花を贈り合う外交を

 一青窈さんは、事件現場となったニューヨークにいた友人から苦しい胸の内を綴ったメールを受け取りました。「とにかく、友人と好きな人が無事でありますように」という思いを込めて、1週間でこの歌詞を書き上げたそうです。後のインタビューで「ミサイルが飛び交う世の中よりも、花を贈り合う外交をーという祈りに近い気持ちで歌っていた」と話しています。

好きな人が百年続きますように

  ♫僕の我慢がいつか実を結び
   果てない波がちゃんと 止まりますように
   君と好きな人が 百年続きますように♫

 プーチン政権による軍事侵攻がちゃんと止まり、ウクライナの人々が百年続きますように!

※注1 写真は「Public Relations Office-Government of Japan」のホームページから転載
※注2 太平洋戦争の死者数は日本約310万人(1977年、厚生省発表)、アメリカ約29万人(米退役軍人省発表)
※注3 写真は東京都立園芸高校のホームページから転載

※参考図書
「友情の二つの花―日米友好のハナミズキをさがしもとめて」(発行所:岩崎書店、著者:手島悠介)、
「餓死した英霊たち」(発行所:青木書店、著者:藤原彰)、
「葉形・花色でひける木の名前がわかる事典」(発行所:成美堂出版、監修:大嶋敏昭)、
「五感で調べる木の葉っぱずかん」(発行所:ポプラ出版、著者:中村宏平)

※参考サイト
「東京都立園芸高校 園芸高校の教育財産」
「みんなの趣味の園芸 育て方がわかる植物図鑑」
「nippon.com ポトマックの桜、“日米交流史”の象徴」
「Public Relations Office-Government of Japan」
「日刊スポーツ 恋愛ソングの定番『ハナミズキ』誕生のきっかけとは」

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