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花コラム

花コラム 第60回:鬼灯と風船唐綿~花が主役の座を奪われた

プレミアムフラワーの花コラム

2022.08.1

花コラム 第60回:鬼灯と風船唐綿~花が主役の座を奪われた

 今回のコラムのタイトルは、漢字の読み方のクイズのようになりました。「ホオズキ」と「フウセントウワタ」と読みます。鑑賞植物の中には花が脇に追いやられ、実や葉、茎などが主役の座を奪うものがあります。夏の風物詩・ホオズキとフウセントウワタの場合は…。

ご先祖様が帰ってこられる目印

 ホオズキと言えば、真っ先に赤い、小さな紙風船のような袋がぶら下がった姿が思い浮かびます。これを提灯に見立て、お盆に帰ってこられるご先祖様の目印になるようにと、玄関や仏壇周りに飾る風習があります。お盆の間、ご先祖様の魂はホオズキの中に宿ると言われています。「鬼灯」と書くのは、空中に漂う火の玉「鬼火」からの連想と思われます。

「ほおずき市」が3年ぶりに開催

 子供の頃に袋の中にある赤い実の中身をくり抜いて、ホオズキ笛を作ったことがあります。私はなかなか音を出せませんでしたが、近所のお姉さんが「ギュッ、ギュッ」と上手に鳴らしていたのを思い出します。
 コロナ禍で中止になっていた東京・浅草の縁日「ほおずき市」は先月、3年ぶりに開催され、多くの人で賑わいました。買って帰って、ホオズキ笛を作って遊んだ親子もいたことでしょう。

開花期と観賞期が違う訳は?

 ホオズキはナス科ホオズキ属の一年草または多年草で、原産地は東アジア。赤い袋は花の付け根にある萼(がく)が果実を包み込んで、丸く膨らんだものです。
 花期を調べると「開花期は6~7月、観賞期は8~9月」と『みんなの趣味の園芸』(NHK出版)に書いてありました。開花期と観賞期が違うのは、ホオズキの観賞対象は花ではなく、花が散った後に赤く色づく袋状の萼ということです。
 ホオズキの花と言われても、すぐに思い浮かばない方もいるかもしれません。直径1~2cmの淡いクリーム色の五弁の花です=写真=。

白いホオズキ?

 ホオズキを探して近くの公園を歩いていると、白っぽい紙風船のような袋がぶら下がっている花木を見かけました。「えっ、白いホオズキ?」と遠目に思い、近づいて見ると薄緑色のフウセントウワタでした。袋には柔らかいトゲが付いており、ハリセンボンのようにも見えます。
 カガイモ科フウセントウワタ属のフウセントウワタは、アフリカ南部原産の一年草です。先の本では「開花期は6月下旬~9月、観賞期は8月~9月(果実)」と記されており、ホオズキと同じように観賞対象は花ではなく、薄緑の袋状になった果実です。

風船のような外国産の綿

 フウセントウワタは、直径1.5cm程度の白っぽい花を数輪束ねたようにして咲かせます=写真左側=。花が咲いた後、果実が膨らんで袋状になり、熟すと割れて、中から綿毛の付いた種=写真右側=が出てきます。原産地では、この綿毛を集めて、クッションの詰め物にしたと言われています。
 風船のような外国産の綿ということで、「風船唐綿」の漢字が当てはめられました。「唐」は中国の王朝の名ではなく、渡来してきたという意味合いです。

花にちなまない花言葉

 ホオズキの花言葉は、袋は大きいのに、中は空洞で種も小さいことから「偽り」「ごまかし」。フウウセントウワタの花言葉は、袋の中に詰まった綿毛がはじけて飛んでいく様子から連想して「いっぱいの夢」「隠された能力」。どちらも花言葉なのに、花にちなんだものではありません。ここでも、花は脇役に押しやられています。

主役に遠慮して控えめに

 ホオズキとフウセントウワタの花は愛らしくて、可憐な花です。しかし、申し合わせたように、小ぶり、地味な色で、下向きに咲きます。まるで主役の萼や果実に遠慮しているかのようです。赤や薄緑の目立つ袋さえなければ、もっと注目されるだろうにーと思うと、少し気の毒になってきました。

※参考図書
「みんなの趣味の園芸 ホオズキ」(NHK出版)
「埼玉の童話」(編集:日本児童文学者協会『県別ふるさと児童館』編集委員会、発行所:リブリオ出版)

※参考サイト
「ガーデニングの図鑑」
「replant.tokyo」
「花言葉.net」
「仏壇のあるリビング お盆のほおずきの飾り方」
「風船みたいな実の植物」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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花コラム 第59回:サボテン~さらに短くなった“花様年華”

プレミアムフラワーの花コラム

2022.07.1

花コラム 第59回:サボテン~さらに短くなった“花様年華”

 近くの神社の境内を通りかかると、木の根元がピンク色に彩られていました。何だろうと思って近づくと、根元に生えたサボテンが花を咲かせていました。
 棘のある茎の部分から細い棒状のものが15㎝ほどニョキニョキと伸びて、その先端で直径6、7㎝の色鮮やかな花が開いています。細長い花びらを束ねたような形をしています。
「刺々しいサボテンから、こんな綺麗な花が」と驚きました。

石鹸代わりだったシャボテン

 サボテンの自生地は南北アメリカ大陸で、日本には16、7世紀頃にポルトガルから渡来しました。当時はポルトガルではサボテンの樹液が石鹸代わりに使われていたことから、ポルトガル語のシャボン(石鹸)がサボテンの語源になったーというのが定説です。サボテンは半世紀前まではシャボテンと呼ばれ、1959年に開園した「伊豆シャボテン動物公園」=写真=は当時の名前を園名にしています。

様々な形が2000種以上も

 西部劇では腕を上へ突き出したようなサワロサボテン=写真左側=がお馴染ですが、この他、球状や平らなものなど形は様々。2000種以上はあると言われています。
 図鑑と照らし合わせてみると、境内にあったサボテンは球状の桃色短毛丸でした。翌日も境内に見に行きました。しかし、残念なことに花はもう萎んでいました=写真右側=。1日しか咲かない一日花だったのです。

5輪の黄色い花

 がっかりして散歩を続けると、今度は車道沿いの緑地帯で違う種類のサボテンが黄色い花を5輪つけていました。大きさは桃色短毛丸と同じぐらいですが、花びらの先端は切りそろえたようで、形はかなり違います。茎が団扇のような形をしているウチワサボテンです。写真を撮っていると、近くの方が「ここにサボテンなんかなかったのに、鳥が種を運んできたんでしょうかね。いつの間にか繁殖して、花まで咲かせたんですよ」と教えて下さいました。
 ウチワサボテンは繁殖力が強く、生態系への影響が大きいとして「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。時折り、街中でも見かけますが、花が咲いているのを見たのは初めてです。

花の命は短くて

 サボテンの花はなかなか咲かないと思っていたけど、そうでもないぞ。そう思ってキョロキョロしながら歩くと、道端や民家の軒先などで幾つかのサボテンが花をつけていました。白い大振りの花、黄色い小さな花、一つの茎に連なるようにして咲く桃色の花、ツクシが膨らんだような赤い花……。茎の形が異なるように、花の色も形も多彩です。
 サボテンの花期は短く、数時間からせいぜい2、3日しか咲いていません。なかなか花が咲かないのではなく、咲いているところに出くわす機会が少なかったということでしょう。

さらに短くなった“花様年華”

 肉厚の茎や根に水を貯めている多肉植物のサボテンは、砂漠のような乾燥したところでも育ちます。しかし、花を咲かせる時は内部に貯めた水だけでは足りません。雨が降る時を待って花を咲かせ、種を作って子孫を残します。
 梅雨時の花と言えば真っ先にアジサイが思い浮かびますが、サボテンも負けてはいません。サボテンは雨の中で、人生で最も美しい瞬間《花様年華》を迎えるのです。
 ところが、今年は梅雨入り後も雨は少なく、6月下旬から晴天が続くにつれて、サボテンの花も見かけなくなりました。ただでさえ短いサボテンの《花様年華》は、さらに短くなったようです。

愛され、憎まれる複雑な植物

 それにしても、固い表皮や棘に覆われた無骨な形の茎と美しい花は何ともアンバランスです。オーストラリアのサボテン栽培家ダン・トーレ氏は著書の中で次のように書いています。
 『美しいと感じる者もいれば、不快だと感じる者もいる。生き物ではないと考える者もいれば、生気にあふれていると考える者もいる。サボテンほど複雑で、愛され、憎まれる植物はほとんどない。』

※伊豆シャボテン動物公園の写真は同公園のホームページから転載。
※参考図書
「サボテンの文化誌」(著者:ダン・トーレ、訳者:大山晶、発行所:原書房)
「シャボテン新図鑑」(著者:シャボマニアック、出版社:日本文芸社)
「サボテン大好き」(著者:飯島健太郎、発行所:講談社)

※参考サイト
「【庭の花たち】とっても綺麗なサボテンの花が咲きました」
「Plantia」

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福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
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花コラム 第58回:ドクダミ~あばたもえくぼ

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2022.06.1

花コラム 第58回:ドクダミ~あばたもえくぼ

 何となく悪いイメージを持っていたが、付き合ってみると好い人だった——ということがあります。知れば知るほど良い所が見えてきて、どうして悪く思っていたのか不思議に思うこともあります。花で言えば、ドクダミがそうでした。

今が盛りの花

 ドクダミは高さ10~20cmの多年草の草本で、初夏から夏にかけて直径2、3㎝ほどの小さな白い花を咲かせます。日陰の湿り気のあるところを好み、全国各地の道端や空き地、林などで群生しています。前回にご紹介したハナミズキと同じように、花びらのように見えるのは花弁ではなく4枚の総苞片(花の付け根の葉)で、花は中央の黄色い突起した部分だけです。

駆除したいと思う人が多い

 ネットの検索エンジンの検索窓にキーワードを打ち込むと、続いて入力する言葉をAIが予測して自動的に表示します(サジェスト機能)。試しにヤフーで「ドクダミ」と打ち込むと、真っ先に「駆除」という言葉が出てきました。ドクダミの駆除方法を調べる人がいかに多いかということです。どうしてドクダミを駆除したいと思う人が多いのでしょうか?

悪臭と書いてある

 第一の理由はドクダミの臭いにあるようです。葉茎だけでなく花にも匂いがあり、抜いたり傷つけたりすると悪臭がすると、多くの本に書いてあります。
 次に、地下茎を張り巡らせて繁茂するので、抜いても抜いても生えてくること。
 さらには「ドクダミ」という名前も印象を悪くしているようです。一説には、臭いや生えている場所から何となく「毒があるのでは」と思われ、毒を溜める「毒溜め」と書かれるようになったと言われています。しかし、実際は正反対。毒を抑える毒下しの薬効があります。「悪い性質や習慣などを改め直す」という意味の「矯める」の字を使って、「毒矯め」と書く説の方が正しいでしょう。

貝原益軒は「十薬」と呼ぶ

 ヤフーのサジェスト機能で3番目に出てきたのは「効用」でした。ドクダミの効用を調べる人も多いのです。
 江戸時代の本草学者で儒学者の貝原益軒は著書「大和本草」=写真=の中でドクダミのことを『十種ノ薬ノ能アリトテ十薬ト号スト云(十種の薬効があるので、十薬と呼ぶことにした)』と書いています。ドクダミはゲンノショウコ、センブリとともに日本の三大民間薬の一つにもなっています。

薬効は十どころではない

 ドクダミの薬効について記した本も数多くあります。「食べる薬草事典」(著者:村上光太郎)によると、蒸し焼きにして軟膏にすれば腫物、吹き出物などの膿の吸い出しや湿疹、にきび、切り傷、打ち身などの治療に効果があります。煎じて服用すれば利尿、駆虫、緩下剤となり、蓄膿症や膀胱炎、夜尿症、冷え性、高血圧、風邪、皮膚病、頭痛、糖尿病などいくつもの疾患に効きます。さらには浴湯料にすると腰痛、痔疾、冷え性、美肌などに効果があると記しています。薬効は十どころではありません。

ドクダミ茶を作って飲んでみた

 ドクダミ茶を飲むと、血液がサラサラになり、肌が綺麗になるので「べっぴんさんのお茶」と呼ばれています。花の咲く今頃がお茶を作るのに適していると聞き、散歩がてらに道端で咲いているドクダミを摘んで帰りました。確かに独特の臭いはしますが、そんなに嫌な臭いではありません。良く洗って、5日間ほどかけて乾燥させて茶葉を作りました=写真左側=。
 淹れたドクダミ茶=写真右側=は、見た目は茶色っぽい普通のお茶と変わりません。ほのかにゲンノショウコか養命酒のような味がしましたが、それがまた身体に良さそうな感じがして、気に入りました。

あばたもえくぼ?

 ドクダミの効用をあれこれ調べた後なので、好きになると相手の欠点も長所のように見える「あばたもえくぼ」の状態になっているのかもしれません。
 薄暗いジメジメした地で小さな白い明かりを灯すようにして咲くドクダミは、なんとも健気で、愛すべき花に思えてきました。ドクダミというセンスの悪いネーミングをやめて、貝原益軒が推奨した「十薬」を花の正式な名前に出来ないものでしょうか。

※参考図書
「食べる薬草事典」(著者:村上光太郎、発行所:農村漁村文化協会)
「身近なハーブ・野菜で からだ美人になる自然派レシピ」(監修:小林妙子、村上志緒、発行所:家の光協会)
「自然食バイブル」(著者:松田友利子、発行所:KKベストセラーズ)

※参考サイト
「福岡県立大学看護学研究紀要 ドクダミの殺菌・抗菌効果の解析」(芋川浩、山井ゆり)
「暦生活 ドクダミ」

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花コラム 第57回:ハナミズキ~国と国の関係は移ろう

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2022.05.1

花コラム 第57回:ハナミズキ~国と国の関係は移ろう

 サクラが散ると、入れ替わるようにしてハナミズキが咲き始めました。日本の街路樹で最も多いのはイチョウの約57万本、2番目はサクラの約52万本、3番目はケヤキの約49万本、そして4番目がハナミズキの約36万本です。5月中頃までは、白や赤、ピンクの花が街中を彩ります。

ミズキより花らしい花

 ミズキ科ミズキ属のハナミズキは北米原産の落葉樹。同じミズキ属のミズキ=写真の左側=よりも美しい、花らしいということで、ハナミズキ(花水木)=写真の右側=と名付けられました。花のように見えるのは花弁ではなく、花の付け根の葉(総苞片=そうほうへん)です。秋には紅葉や赤くなった果実なども楽しめ、観賞期間が長いのが特長です。

キリストが処刑された木

 英語名はdogwood(犬の木)。木の皮を煮詰めて、犬の皮膚病の薬にしていたというのが謂(いわ)れです。
 キリストが処刑された十字架に使われたという伝説もあります。ハナミズキは罪深い自分を恥じて、二度と処刑に使われないよう小さくなりました。高さは4~10mもある大きな木ですが、その前はもっと大きな巨大な木だったということでしょうか。4枚の花びらは十字架の形に変わり、キリストを打った釘の痕が花びらのくびれになったとも言い伝えられています。

日米の友情を示し合う

 サクラとハナミズキは花期をバトントスするだけでなく、日本とアメリカの友情を示し合う関係にもあります。
 日本とロシアが戦った日露戦争(1904~1905)はアメリカが講和に導きました。そのお礼の意味も込めて、1912年に東京市長だった尾崎行雄はサクラ(ソメイヨシノ)の苗木をアメリカに贈りました。世界的な花の名所・ワシントンD.C.のポトマック河畔のサクラ並木=写真※注1=のはじまりです。

友情交換の26年後に交戦

 その3年後、返礼としてワシントン市から東京市に贈られたのがハナミズキです。白い花の苗木40本、ピンク色の苗木20本が上野公園や日比谷公園などに植えられました。
 日本とアメリカは友情で結ばれたはずでしたが、それから26年後に太平洋戦争(1941~1945)が勃発。日米両国は約340万人(※注2)が亡くなるという壮絶な戦いを繰り広げました。

花には罪はない

 戦争中はアメリカではサクラを、日本ではハナミズキを「敵国の花だ」として根こそぎにしようという動きがありました。しかし、「花には罪はない」という花を愛する人々の思いが二つの花を守りました。ハナミズキの原木は今でも東京都立園芸高校に残っています=写真※注3=。

国と国との関係の移ろい

 花が季節と共に移ろうように、国と国の関係もその時々の状況、事情によって移ろっていきます。
 戦争が終わり、日米両国は今では同盟国となり、再びサクラとハナミズキのように友情を示し合う仲になりました。同じヒマワリを国花に掲げるウクライナとロシアはこの先、どのような関係になっていくのでしょうか。

「ハナミズキ」の歌に寄せて

 歌手・作詞家の一青窈さんの代表作「ハナミズキ」(2004年発売)は結婚式でよく歌われますが、恋愛の歌ではなく、アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月11日)をテーマにしたものです。

ミサイルでなく花を贈り合う外交を

 一青窈さんは、事件現場となったニューヨークにいた友人から苦しい胸の内を綴ったメールを受け取りました。「とにかく、友人と好きな人が無事でありますように」という思いを込めて、1週間でこの歌詞を書き上げたそうです。後のインタビューで「ミサイルが飛び交う世の中よりも、花を贈り合う外交をーという祈りに近い気持ちで歌っていた」と話しています。

好きな人が百年続きますように

  ♫僕の我慢がいつか実を結び
   果てない波がちゃんと 止まりますように
   君と好きな人が 百年続きますように♫

 プーチン政権による軍事侵攻がちゃんと止まり、ウクライナの人々が百年続きますように!

※注1 写真は「Public Relations Office-Government of Japan」のホームページから転載
※注2 太平洋戦争の死者数は日本約310万人(1977年、厚生省発表)、アメリカ約29万人(米退役軍人省発表)
※注3 写真は東京都立園芸高校のホームページから転載

※参考図書
「友情の二つの花―日米友好のハナミズキをさがしもとめて」(発行所:岩崎書店、著者:手島悠介)、
「餓死した英霊たち」(発行所:青木書店、著者:藤原彰)、
「葉形・花色でひける木の名前がわかる事典」(発行所:成美堂出版、監修:大嶋敏昭)、
「五感で調べる木の葉っぱずかん」(発行所:ポプラ出版、著者:中村宏平)

※参考サイト
「東京都立園芸高校 園芸高校の教育財産」
「みんなの趣味の園芸 育て方がわかる植物図鑑」
「nippon.com ポトマックの桜、“日米交流史”の象徴」
「Public Relations Office-Government of Japan」
「日刊スポーツ 恋愛ソングの定番『ハナミズキ』誕生のきっかけとは」

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花コラム 第56回:ヒマワリ~ウクライナに心を重ねて

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2022.04.1

花コラム 第56回:ヒマワリ~ウクライナに心を重ねて

 ロシアに侵攻されたウクライナに心を重ねて、半世紀前の映画が全国各地の映画館で緊急上映されています。イタリアの名優ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが第二次世界大戦で引き裂かれた妻と夫を演じた「ひまわり」(1970年)です。

ヒマワリ畑の下には無数の人々が

 上映している映画館が遠いので、DVD=写真は「50周年HDレストア版」=をレンタルして観ました。
 ジョバンナはロシア戦線へ送り出されて行方が分からなくなった夫アントニオを探して、戦いのあったヒマワリ畑を訪れます。そこで、地元の人がジョバンナに語り掛けます。「ご覧なさい。ヒマワリの下にイタリア兵や捕虜になったロシア人が埋まっています。そして無数のロシアの農民、老人、女、子供も…」。
 イタリアやロシアをウクライナと言い換えれば、今の状況と重なってきます。

数え切れないほどの家族が引き裂かれた

 ヒマワリ畑の撮影地は、ウクライナの首都キーウ(キエフ)から南約500㎞にあるヘルソン州=地図の赤印=でした。在ウクライナ日本国大使館のホームページには「今でも7月下旬頃には一面に咲き誇るヒマワリを見ることができます」と書いてあります。しかし、一帯は先月にロシア軍の攻撃を受け、見る影もない地に変わり果ててしまいました。
 ウクライナでは18~60歳の男性は戦闘要員として国内にとどまり、女性、子供、老人の一部が国外へ避難しています。映画の二人のように引き裂かれた家族は数えきれないほどいるでしょう。

何を言っても構わない

 1970年代に発売されたビデオの説明書には「(映画に出てくるひまわり畑は)ウクライナと信じておられる方には申し訳ないが、モスクワのシェレメチェボ国際空港の近くだった。」と書いてありました。
 同大使館によると、ビデオが発売された当時はウクライナは旧ソビエト連邦の中の一つの共和国でした。この時代、同連邦は外国人がモスクワのクレムリンから80㎞以上離れた所へ行くのを禁じていました。そこで観光客が映画のロケ地を見ようとしてクレムリンから1000㎞以上離れたウクライナに行かないよう、同連邦が虚偽の説明をしたということです。その証拠に、映画の中でジョバンナに話しかけた地元民の言葉はウクライナ語でした。
 今回のウクライナ侵攻に関して、プーチンやロシア当局が「ウクライナが戦争を始めた」などと虚偽の発表を繰り返すのを聞いていると、「目的達成のためなら、何を言っても構わない」というのが、かの国の考え方なのかなと思ってしまいます。

ヒマワリが抗議の象徴に

 ウクライナの国花はセイヨウカンボク=写真左=とスミミザクラ=同右=とされていましたが、今ではヒマワリが国を象徴する花になっています。そのヒマワリの絵を描いてSNSに投稿して、ウクライナに心を寄せようという運動が広がっています。アメリカではロシアに抗議するデモの参加者がヒマワリの花を手にしていました。

底抜けに明るい花なのに

 実はヒマワリはウクライナとともにロシアの国花でもあります。太陽に向かって咲く底抜けに明るい花が、侵攻した国と侵攻された国のいずれをも象徴するというのは、何とも皮肉な話です。

平穏な暮らしと美しい自然の<Fin>

 映画の最後は物悲しいテーマ曲が流れる中、ヒマワリ畑がスクリーンいっぱいに映し出され、〈Fin〉(終わり)の文字が浮かび上がりました。
 侵攻が一日も早く〈Fin〉となり、ヒマワリのように明るい明日がウクライナの人々に訪れますように!

※参考サイト
「在ウクライナ日本国大使館」
「侵攻が続くウクライナに思いを馳せる名作『ひまわり』50周年HDレストア版、緊急公開!映画.com」
「“ひまわりの絵を描きウクライナに心を寄せよう”動き広がる‐NHK.JP」
「国花 Wikipedia」
「グーグルマップ」

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花コラム 第55回:山吹~光源氏と「お主も悪よのう」

プレミアムフラワーの花コラム

2022.03.1

花コラム 第55回:山吹~光源氏と「お主も悪よのう」

 野や山に色とりどりの花が咲く季節がやってきました。柔らかい赤は桃色、薄い紫みの赤は桜色、鮮やかな赤は薔薇(ばら)色、鮮やかな黄は蒲公英(たんぽぽ)色、明るい青は勿忘草(わすれな)色……。花の名前がついた色は色々とあります。古来、花は人々の生活に彩りを添え続けてきました。

身近な花と馴染みのある色

 バラ科ヤマブキ属の山吹(やまぶき)は、春から初夏にかけて花をたわわにつけ、春の季語にもなっています。日本原産で、沖縄を除く日本各地の低い山や丘陵地で群生しており、日本人には身近な花です。
 その花の色は、黄金のような鮮やかな黄色い山吹色。クレヨンや絵の具の色にもなっているので、子供の頃から馴染みのある色です。

光源氏が見初めた女子の服は

 山吹は数多くの和歌集や物語に登場します。源氏物語の「若紫巻」では、光源氏が後に妻となる紫の上を見初めた時の様子を次のように綴っています=写真は「源氏物語団扇画帖」第五帖・若紫巻の場面=。
 『白き布、山吹などのなえたる着て、走り来たる女子(おんなご)、あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生ひ先見えてうつくしげなる容貌(かたち)なり。』
 (白い下着に山吹か何かの着ならしたものを着て、走ってきたのは、大勢見えた他の子供とは似ても似つかないくらい、これから美しくなる容貌をしている。)

山吹色は美しさを際立たせる

 大勢いる子供の中で、光源氏の目に真っ先に入ったのは山吹色の衣でした。そして、その衣を着ている女子はこのうえなく可愛かった。まさに、山吹色は紫の上の美しさを際立たせる色だったのです。

「お主も悪よのう」

 山吹は風流という言葉がしっくりくる花ですが、意外なところでも山吹が使われていました。「山吹色の菓子」です。
 ピクシブ百科事典によると「時代劇に出てくる悪代官の大好物で、主に桐の箱詰めにされ、アコギな商売をしている連中から贈られるらしい」とあります。
 箱の中身はお菓子ではなく、山吹色の小判。悪代官は「お主も悪よのう」と含み笑いをしながら、悪徳商人から箱詰めを受け取り、商人は「いえいえ、お代官様ほどでは」と返す…。時代劇で見たことのあるようなシーンが思い浮かびます。どういう訳か、悪徳商人は「越後屋」と呼ばれることが多いようです。

ゴマすり用の腹黒いお菓子

 「山吹色のお菓子」という名前のパロディのようなお菓子もありました。菓子箱の中に詰まった小判の束の中身は胡麻クリームの入ったダックワーズ。埼玉県朝霞市の製菓会社セントラル・スコープが11年前から「ゴマスリ用の腹黒いお菓子」と銘打って発売しています=写真は同社のサイトから=。

金品授受のビッグウェーブ?

 2019年秋、このお菓子に全国から注文が殺到し、同社のサイトに「ごめんなさい…売り切れちゃいました 理由はお分かりいただいてますよね どこかの誰かが 本物使っちゃったからですね…」というお断り=写真は同社のサイトから=が掲載されました。理由というのは、この年の9月に関西電力の役員らと原発の地元の町の元助役らとの長年にわたる癒着が発覚したことです。

悪代官と悪徳商人のやりとりを連想

 関西電力側は原発に関する工事情報などを公表前に元助役に知らせ、元助役の関係した会社に請け負わせるなどし、役員ら83人が元助役から約3億7千万円の金品を受領していました。このことが悪代官と悪徳商人のやりとりを連想させ、「山吹色のお菓子」の売り上げ増につながったのでしょう。

山吹色は時を越えて人の目をくらます

 役員らが受け取った金品の中には現金や洋服仕立券などの他に、まさしく山吹色に輝く金貨もありました。光源氏の目をくらませて恋路へと誘った山吹色は、千年経った現代、およそ風流とはかけ離れた場面で、元役員らの目をくらませて人の道から外れさせることになりました。

※参考図書
「源氏物語全現代語訳(二)今泉忠義」(発行所:講談社)
「日本の伝統色100 太陽の朱 空の藍 光の山吹」(著者:吉岡幸雄、発行所:紫紅社)

※参考サイト
「みんなの趣味の園芸 ヤマブキ(NHK出版)
「伝統色のいろは」
「色彩図鑑 花の色一覧」
「ピクシブ百科事典」
「山吹色のお菓子」

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福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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花コラム第54回:春を告げる儚い花~セツブンソウは人間嫌い

プレミアムフラワーの花コラム

2022.02.1

花コラム第54回:春を告げる儚い花~セツブンソウは人間嫌い

 早春に地中から姿を現して花をつけ、春が終わると地中へと姿を消す野の花を「スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral)」と言います。「春の短い命」と訳されていますが、「Ephemeral」には「つかの間の」「一時的な」などの他に「儚(はかな)い」という意味もあります。今回はスプリング・エフェメラルの一つ、セツブンソウ(節分草)の儚い話です。

日本固有の“春を告げるプリンセス”

 セツブンソウはキンポウゲ科セツブンソウ属の多年草で、日本固有の種です。草丈は10cmほど。その名の通り節分の頃に直径2㎝ほどの小さな、白い可憐な花をつけ、「春を告げる花」「春のプリンセス」とも呼ばれています。ウメのような5枚の花びらは萼片(がくへん)が花弁状に変化したもので、本当の花弁ではありません。

どういう訳か意外な花言葉も

 ひっそりと、優しく咲く様子から「微笑み」、花の中央部の黄色い蜜槽が冠のように見えることから「光輝」の花言葉が生まれました。この他、どういう訳か「人間嫌い」という意外な花言葉もあります。

かつては日本各地に群落

 かつては春光が注ぎ始めると、関東から西の各地で霜を押し分けて顔を出し、大群落となって一帯を白く彩ったと言われています。しかし、最近は埼玉県小鹿野町や兵庫県丹波市青垣町、広島県庄原市総領町などの自生地以外では、余り見かけなくなりました。同じスプリング・エフェメラルのカタクリ、ニリンソウ、フクジュソウなどは知っていても、セツブンソウは見たことがないという方が多いのではないでしょうか。

絶滅する恐れも

 セツブンソウは、環境省が定めた絶滅のおそれのある野生生物のリスト「レッドブック」で準絶滅危惧種(生息条件の変化によっては、より危険度の高い絶滅危惧種に移行する可能性のある種)に指定されています。さらに静岡県や愛知県などでは、絶滅の危惧がより強い絶滅危惧2類(VU)にも指定されています。
 ※写真は日本レッドデータのセツブンソウ分布図。紫、橙、黄色の順に絶滅の危惧が大きい。

開発と乱獲のダブルパンチ

 セツブンソウが少なくなった原因は開発による環境の変化、それに乱獲と言われています。綺麗な花を見つけると、ついつい持ち帰る人もいるのでしょう。一年の大半を地中で球根や地下茎の形で眠り、ようやく春先に顔を出して花を咲かせたと思ったら、切られてしまう。何とも、儚い花です。

やはり野に置け

 やはり野に置け蓮華草。蓮華草もセツブンソウも、野で咲いてこそ美しいものです。「人間嫌い」の花言葉は、人間の仕打ちを悲しく思っているセツブンソウの気持ちを言い当てているのかもしれません。

※参考図書
「育ててみたい山野草 春 NHK趣味のガーデニング21」(編集人:硲美仁、発行所:日本放送協会)の「セツブンソウ」(著者:内藤登喜夫)
「二月の花」(監修:大岡信、田中澄江、塚谷裕一、発行所:作品社)の「季節を知る律義者のセツブンソウ」(著者:本田正次)

※参考サイト
「日本のレッドデータ検索システム」
「まごころの宝箱 丹波市観光協会」
「野川公園オフィシャルブログ」
「庄原観光ナビ」
「スプリング・エフェメラル~春のはかない植物たち‐札幌市」
「花言葉事典」

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花コラム第53回:今年こそ~ロウバイの不思議な力で

プレミアムフラワーの花コラム

2022.01.1

花コラム第53回:今年こそ~ロウバイの不思議な力で

 ロウバイ(蠟梅)は不思議な花です。種々の花が咲き乱れる季節は目立たない花木=写真=で、気を引くことは殆どありません。ところが、1月のこえを聞くと俄然、存在感を放ちます。他の花に先がけて、爽やかな香りを漂わせ、半透明のような美しい黄色い花を咲かせて、新しい年の息吹きを運んできます。

雪中の四花

 ロウバイは高さ2~5mになる落葉広葉樹で、1月から2月にかけて花をつけます。中国ではウメ、スイセン、サザンカとともに、冬を彩る貴重な花として「雪中の四友」と呼ばれ、文人画に好んで描かれています。日本には江戸時代に渡来しました。

蝋(ろう)細工?あるいは蜜蝋?

 名前は、旧暦の臘月(ろうげつ)・12月にウメのような形の花を咲かせ、ウメのような強い香りを放つことに由来するという説があります。しかし、ウメはバラ科バラ属、ロウバイはロウバイ科ロウバイ属で、分類学的には違うものです。
 この他、花が蝋(ろう)細工のようだから。さらには、花弁がミツバチの作る蜜蝋(みつろう)のような光沢、質感をしているからーとも言われていますが、花を見ていると、どの説にも頷いてしまいます。

文人の愛した花

 ロウバイを詠った俳句や短歌は数えきれないほどあります。有名なところでは…。
 《蠟梅や雪うち透(す)かす枝の丈(たけ)》(芥川龍之介)
 《蠟梅を透けし日射しの行方なし》(後藤比奈央)
 《蠟梅の香の一歩づつありそめし》(稲畑汀子)
 《蠟梅の老いさびし香のほのぼのとわが枕べを清くあらしむ》(窪田空穂)
 文人は、この透き通るような花に美しさ、清々しさ、清らかさを感じ取ったのでしょう。

掛け軸の前にロウバイ

 夏目漱石の「永日小品」の中の「懸物(かかりもの)」にもロウバイが登場します。
 《妻に先立たれた老人が石碑を立ててやろうと決心します。お金がないので先祖伝来の大切な掛け軸を好事家に売り、立派な石碑を誂えました。その後、掛け軸が気になり、好事家のところに見せてもらいに行くと、掛け軸は茶室に飾られ、その前には透き通るようなロウバイが活けてありました。老人は「おれが持っているよりも安心かもしれない」と倅(せがれ)に言いました。》
 石碑の身代わりとなって売られていった掛け軸は、ロウバイの花が活けられたことによって報われました。ロウバイには、有難い、不思議な力があるようです。

コロナ禍の終息を先見

 花言葉は「慈しみ」「ゆかしさ」。花の少ない季節に、うつむき加減に花を咲かせることにちなみます。さらに「先導」「先見」。他の花より一足早く開花することからの連想でしょう。
 ロウバイは、その有難い、不思議な力と慈しみで「今年こそコロナ禍は終息する」と先見しているーと思いたいものです。

※参考図書
「定本 漱石全集」(著者:夏目金之助、発行所:岩波書店)
「花をめぐる物語 尾崎左永子の章」(著者:尾崎左永子ら、発行所:かまくら春秋社)

※参考サイト
「みんなの趣味の園芸 NHK出版」
「暦生活 蠟梅」
「歳時記 蠟梅」
「蠟梅の俳句」
「花言葉‐由来」

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花コラム第52回:シネラリア~気の毒な名前の花たち

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2021.12.1

花コラム第52回:シネラリア~気の毒な名前の花たち

 花の種類が少なくなる冬場から早春にかけてが、シネラリアの出番です。ところが、近くのホームセンターの園芸売り場で「シネラリアはありますか?」と尋ねると、若い店員さんは「えっ?」と小首をかしげました。

見ていて飽きない花

 キク科ペリカルリス属のシネラリアは、赤、紫、青、ピンク、白、黄など色とりどりの光沢のある花をびっしりと咲かせます。咲き方も花びらが一重に咲く「一重咲き」、同心円を基調とした模様のように咲く「蛇の目咲き」、絞り染めの模様のように咲く「絞り咲き」など様々で、見る人を飽きさせません。

サイネリアに言い換えられた理由

 北アフリカやカナリア諸島が原産で、明治時代に渡来しました。英語名は「Florist's Cineraria」、和名は英語名をそのまま片仮名に書き直した「シネラリア」です。ところが、この名前は「死」を連想させるとして、次第に敬遠されるようになりました。その代わりに「ci」を「シ」から「サイ」に読み替えて、サイネリアと呼ばれることが多くなりました。
 園芸売り場でも「サイネリアは?」と言い換えると、ようやく通じました。店員さんは経験が浅かったのかもしれませんが、流通現場でもサイネリアの名前の方が定着しているようです。

国によっては全く違うイメージに

 サイネリアの花言葉は「いつも快活」「よろこび」。寒い冬から春にかけて、元気いっぱいに明るい花を咲かせることに由来します。イギリスなどでは、「この花のように元気になってください」という祈りを込めて、病気のお見舞いに贈られることが多いそうです。
 ところが日本では、この花をお見舞いやお祝いの贈り物にするのは良くないとされています。「シネラリア」という“本名”を思い浮かべるからでしょう。同じ花でも、国によって全く違うイメージになってしまいます。

ヘクソカズラという可哀そうな名の花

 シネラリアは、たまたま英語名が日本語で負のイメージになった訳ですが、意図して付けられた名前なのに、「これでは花が可哀そう」というものもあります。
 アカネ科ヘクソカズラ属のヘクソカズラは可憐な白い花をつけますが、名前を聞くと眉をひそめてしまいます。「屁糞葛」と漢字で書けば、なおさらです。葉や茎を傷つけると悪臭を放つことから、こんな名前がつけられました。

不名誉な名前にダメ押し

 この花は、万葉集でも詠まれています。
 《そう萊(きょう)に延(は)ひおほとれる糞葛絶ゆることなく宮仕へせむ》高宮王
 古庄ゆき子・別府大学名誉教授によると、歌の意味は「カワラフジにまといつき、広がり乱れている糞葛のツルが絶えないように、絶ゆることなく、いつまでも宮仕えをしよう」というものです。昔は「糞葛」だったのが、今では頭に「屁」まで付けられたのですから、花にとっては堪ったものではありません。
 さすがに、こんな名前では可哀そうだと思われたのでしょう。「サオトメバナ(早乙女花)」という別名も付けられました。可愛らしい花のイメージは、田植えをする乙女に重なります。

よりによって盗人?

 この他、ヌスビトハギ(盗人萩)という名前の多年草もあります。細長い茎に淡紅色の小さな花=写真右側=をつけます。
 盗人は足音を立てないように足の裏の外側だけを地面につけて歩くと言われています。一説には、果実=写真左側=が盗人の足跡に似ているのが由来ということです。また、種子が知らないうちに人にくっ付くのが由来とも言われています。「よりによって、盗人に結び付けなくてもいいのに」と思ってしまいます。

心無い名前を悲しんでいる花も

 考えてみれば、花の名前は人が花に断りなしに、言わば勝手に付けたものです。胡蝶蘭のように美しい、綺麗な名前の花もあれば、気の毒な名前の花もあります。花に心があるのなら、心無い名前を悲しんでいる花もあるでしょう。

※参考図書
「四季の花図鑑」(発行者:菅国典、発行所:木馬書館)
「あんまりな名前」(著者:藤井青銅、発行所:扶桑社)

※参考サイト
「みんなの趣味の園芸 NHK出版」「花言葉⁻由来」
「楽して楽しむガーデニング サイネリア(シネラリア)の特徴と育て方!」
「屎葛の歌―万葉集十六の歌をよむ―古庄ゆき子」
「育て方ボックス シネラリアの育て方」
「日本国語大辞典 盗人萩」「ヘクソカズラ 鹿児島県薬剤師会」

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花コラム第51回:「金のなる木」はないからね

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2021.11.1

花コラム第51回:「金のなる木」はないからね

 子供の頃に親に何かをねだると、「金のなる木はないからね」とよく言われたものです。「金のなる木」って本当にあるのかな?お札が葉っぱになっているのかな?もぎ取ったら、また新しいお札がはえてくるのかな?子供心に妄想を膨らませたものです。
 それから随分経ってから、本当に「金のなる木」があることを知りました。

小さな可愛い花をつける

 「金のなる木」はベンケイソウ科クラッスラ属の常緑低木。正式名はクラッスラ、園芸名はカゲツ(花月)、和名はフチベニベンケイ(縁紅弁慶)です。11月から年明けにかけて、白や桃色の直径1cm強の小さな可愛らしい花を多数つけます。

五円玉がなる木

 原産地は南アフリカで、昭和初期に日本に渡来しました。英名は「money tree(お金の木)」「dollar plant(ドルの植物)」。丸くて分厚い葉がコインに似ていることに由来します。この英名にあやかって、園芸農家が若枝に五円玉を通して育て、硬貨が実ったように見せかけて販売しました。これが人気になり、「金のなる木」「成金草」と呼ばれるようになったそうです。

観葉植物の縁起物

 「金のなる木」は本当にありましたが、本当のお金がなる訳ではありませんでした。いわば観葉植物の縁起物といったところでしょうか。花言葉は「一攫千金」「富」「幸運を招く」。風水では、丸みを帯びた植物は金運があると言われており、開業や新築祝いなどの贈り物にされることもあります。

吉四六さんが売った金のなる木は?

 民話の吉四六(きっちょむ)話に、「金のなる木」が出てきます。
《吉四六さんは金もうけをしようと、町に行って「金のなる木はいりませんか」とふれまわりました。町の人は「そんな木があるなら、庭に植えて金をザクザクならせよう」と思い、吉四六さんを呼び止めました。
 吉四六さんが「7本70文にまけておくから、一緒に買え」というので、町の人が70文を払いました。吉四六さんはお金を懐にいれてから、もったいぶって言いました。
 「朝は早起き(木)ほら1本。たすき(木)がけ、そら2本。後ろ鉢巻き(木)ほら3本。手に唾(つば)き(木)。あと3本は、人に負けぎ(木)で根気(木)よく働き(木)だ。ほら、安いもんだろう」。》

お金を稼ぐ王道は今も昔も

 吉四六さんが町の人をだまして、お金をせしめたという話ですが、お金を稼ぐ本質を突いているではありませんか。楽をしてお金を稼げるなんて、虫のいい話はない。早起きして、一生懸命にコツコツと働くのが一番。昔も今も、お金を稼ぐ王道に変わりはないということです。
 今にして思うと、親が私に何度も「金のなる木はないからね」と言ったのは、「地道に働く大人になりなさい」という諭しの言葉だったのでしょうか。

※参考図書
「おなかがよじれる古典笑噺傑作選5巻 よくばりわるものの笑噺」(監修:川村たかし、発行所:教育画劇)

※参考サイト
「本当にあった!?観葉植物『金のなる木』で幸運を呼び込もう!」
「Plantia 初心者向けの草花を調べる」

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