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花コラム

花コラム 第73回:ナデシコ~言葉は生き物

プレミアムフラワーの花コラム

第73回:ナデシコ~言葉は生き物

2023.9.1

 先月に開催されたサッカーの女子ワールドカップで、日本代表の「なでしこジャパン」はベスト8まで勝ち上がり、健闘を称える記事が相次ぎました。「なでしこの勇気 壁破った」「果敢に攻めたなでしこ」「なでしこが豪快にシュート」「なでしこの気迫と勇気」……。
 ナデシコは「大和撫子(ヤマトナデシコ)」の別名。大和撫子は「か弱いながらも、りりしい所がある」(新明解国語の辞典)日本女性になぞらえた言葉です。ピッチを駆け巡る「なでしこ」には「か弱い」イメージはなく、むしろ力強さが際立ちました。
  ※写真は朝日新聞2023年8月6日付け朝刊スポーツ面

撫でていつくしむ愛児のよう

 ナデシコはナデシコ科ナデシコ属の多年草で、世界で約300種あると言われています。カワラナデシコ=写真=は日本に自生する代表的なナデシコで、花弁に深い切れ込みのあるのが特徴です。夏から秋にかけて、直径4、5cmの淡紅色の可憐な花を咲かせ、秋の七草の一つに数えられています。
 名前の由来は、その可愛い花姿から撫でていつくしむ愛児に見立て「撫子(なでしこ)」と名付けられたという説が有力です。か弱そうな名前ですが、生長が早く、とても丈夫な品種です。

一人の歌人が日本女性の代表の花にした

 ナデシコを初めて女性にたとえた歌は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された万葉集に収められています。ナデシコを詠んだ歌26首のうち11首は大伴家持が詠ったものです。家持は早逝した恋人にナデシコをだぶらせて、庭にこの花を植えて、愛し続けました。
 「なでしこが 花見るごとに をとめらが ゑ(笑)まひのにほひ 思ほゆるかも」(なでしこの花を見る度に、あの娘の笑顔の美しさが思い出されます)
 万葉学者の上野誠さん(奈良大学名誉教授)は著書の中で「なでしこが『やまとなでしこ』と日本人の女性の美を代表することになったのは、ひとりの歌人の力によるものだと思うと、不思議な感じがしてなりません。」と記しています。

清少納言も絶賛

 後に清少納言も「枕草子」(11世紀初頭に完成)の中で、ナデシコを絶賛しています。
 「草の花は なでしこ。唐のはさらなり、大和のもいとめでたし」(草花は、なでしこが良い。唐なでしこはいうまでもなく、大和なでしこも大層立派だ)
 「唐なでしこ」はナデシコの一種の石竹(せきちく)=写真=です。葉が竹に似ていることから、この名前が付きました。石竹が中国から伝来したことから、日本のカワラナデシコが日本の古称である「大和」をつけて「大和撫子」と呼ばれるようになりました。

大和撫子に男性の願望が反映

 ナデシコは「日本女性の清楚な美しさをほめていう語」(小学館デジタル大辞泉)でしたが、この言葉には具体的な様々なイメージが付け加えられてきました。
 女性向けのウェブメディア「Domani」は、大和撫子の特徴として以下のように記しています。「色白で黒髪がきれい」「仕草が控えめで凜としている」「飾り気のないファッション」「一歩引いて男性を立てられる」「教養や礼儀を身につけている」。
 女性はこうあってほしいという男性の願望が反映したのでしょうか。しかし、時代と共に女性の生き方、役割は変わりました。「女性はこうあるべきだ」という男性の偏った価値観を押し付けるものだという批判もあり、大和撫子はドラマや歌のタイトルにはなっても、言葉の意味は次第に曖昧になっていきました。

ナデシコとサッカー選手に違和感も

 「なでしこジャパン」の愛称は、日本サッカー協会が2004年に一般公募で選びました。選考理由は「日本代表の持つひたむきさ、芯の強さにピッタリ」というものでした。しかし、昔ながらの大和撫子のイメージを持っている人には「なでしこ」と選手のイメージは、すぐには重ならなかったかもしれません。

言葉は時代と共に変わる

 「なでしこジャパン」は2011年の女子ワールドカップでは優勝しています。若い人の中には「なでしこジャパン」の活躍で、初めてナデシコや大和撫子の言葉を知る人もいます。そうした人は、この言葉に活発な、健康的なイメージを抱くことでしょう。
 一人の歌人が詠んだ歌で日本女性の美の代表になったナデシコは、1300年経った今、女子サッカーというスポーツで新しいイメージをまとおうとしています。まさに言葉は生き物。時代と共に変わっていきます。

※参考図書
「『令和』の心がわかる 万葉集のことば」(著者:上野誠、発行所:幻冬舎)
「かわいい花」(監修:小池安比古、出版社:学研プラス)

※参考サイト
「日本の古典へようこそ 枕草子」
「Domani 『大和撫子』ってどんな人」
「家庭画報 声に出してよみたい古典」
「語源由来辞典」

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コラムライターのご紹介

福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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