プレミアムフラワーの花コラム

2020.11.1

第39回:パンデミック下の再生の匂い〜ヒース(エリカ)の花

 小説は、その時々の社会を反映します。F・H・バーネットが1911年に発表した名作『秘密の花園』の主人公の少女・メリーは、イギリス領だったインドで暮らしていましたが、両親がコレラで相次いで亡くなり、イギリスの叔父の屋敷に引き取られます。
 ペストは19世紀末から1910年代にかけて世界的に大流行しました。当時はメリーのような孤児は少なくなかったのでしょう。

花園と少女の再生の物語

 わがままで孤独で、ひねくれたメリーは牧童のディッコンらと知り合い、次第に明るい女の子になっていきます。ある日、屋敷の中で壁に囲まれた、荒れ果てた庭園を見つけます。枯れたように見えた花や草木がまだ生きていることを知り、ディッコンらと一緒に綺麗な花園に蘇らせることで、自らも成長するという“花園と少女らの再生”の物語です。

ヒースの匂いがする男の子

 二人が初めて出会った時に、メリーが抱いたディッコンの印象は次のように描かれています。《ヒースや草や木の葉のいい匂いがしました。この男の子は、そんなものでできてでもいるような感じがしました。メリーはその匂いがとても好きでした。》
 ヒースの匂いは、メリーの生まれ変わりを予感させるものでした。

「嵐が丘」の舞台にも

 ヒースにはイギリスやアイルランドの荒れ果てた大地と、その地に生える野草の二つの意味があります。野草の方は日本ではエリカと言った方が馴染みがあるでしょう。小説に出てくるヒースは、このエリカのことです。
 荒地に咲く姿から「孤独」「寂しさ」という花言葉が生まれました。エミリー・ブロンテの『嵐が丘』も、このヒースが茂るスコットランドの大地が舞台になっています。

エリカの花は鈴みたい

 ツツジ科エリカ属のエリカは600以上もの野生種があり、品種によって花期は異なります。多くは11月から翌年6月頃にかけて、高さ2mほどの低木を覆うように小さな花を咲かせます。その花は『秘密の花園』では《紫色の鈴みたい》と描写されていますが、他にも白、赤、ピンク、オレンジ、黄などの色もあります。
 原産地はヨーロッパ、アフリカです。日本では北海道での栽培が盛んで、函館市の道南四季の杜公園(写真)や札幌市の百合が原公園にはエリカが群生するヒースガーデンがあります。

再生を予感させる花

 ペストのパンデミック(感染症の世界的な大流行)から1世紀が過ぎ、世界は今、新型コロナウィルス感染症のパンデミックに襲われています。社会の混乱は続いていますが、政府は来年前半にワクチンの接種を始めることを目指していると報じられています。
 花屋の店頭に並び始めたエリカの近縁種・カルーナ=写真=に顔を近づけると、少し甘みのある優しい匂いがしました。 メリーの生まれ変わりを予感させた匂いは、パンデミックの終息と社会の再生も予感させているようです。

※参考図書
「秘密の花園」(作:フランシス・ホジソン・バーネット、訳:猪熊葉子、発行:福音館書店) 「『秘密の花園』ノート」(著:梨木香歩、発行:岩波書店) 「嵐が丘・上下巻」(著:エミリー・ブロンテ、訳:小野寺健、発行:光文社)
※参考サイト
「エリカとは‐みんなの園芸 NHK出版」 「HORTI by Green Snap」
※道南四季の杜公園のヒースガーデンの写真は同公園のホームページより転載

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福田徹(ふくだ とおる)

元読売新聞大阪本社編集委員。社会部記者、ドイツなどの海外特派員、読売テレビ「読売新聞ニュース」解説者、新聞を教育に活用するNIE(Newspaper in Education)学会理事などを歴任、武庫川女子大学広報室長、立命館大学講師などを勤めました。
花の紀行文を手掛けたのをきっかけに花への興味が沸き、花の名所を訪れたり、写真を撮ったりするのが趣味になりました。月ごとに旬の花を取り上げ、花にまつわる話、心安らぐ花の写真などをお届けします。

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