プレミアムフラワーの花コラム

2019.7.1

第23回:ユウガオ〜紫式部が悲劇のヒロインに名付けた理由は

夕顔の絵巻がフランスで見つかった

 江戸時代初期に描かれた「盛安本源氏物語絵巻」の中のヒロイン・夕顔の死を描いた場面=写真=が今年1月、フランスで見つかりました。夕顔は、光源氏が深く愛した女性です。短い命を閉じて横たわる夕顔、枕元で顔を覆って嘆き悲しむ光源氏らの姿が、金をふんだんに使った鮮やかな色合いで描かれています。不幸な場面を描いた源氏絵は極めて珍しいことから、話題になりました。

ささやかであわれな家に咲く花

 源氏物語に登場する夕顔は通称です。気になる女性がいる家の板塀に白い花が咲いています。光源氏が花の名前を尋ねると、随身(貴族が外出する時に護衛として随従した役人)はこう答えます。
 「あの白く咲いている花は、夕顔と申します。花の名は一応人並みのようですが、こういうささやかであわれな家の垣根に咲くものでございます」=原文「かの白く咲けるをなむ、夕顔と申しはべる。花の名は人めきて、かうあやしき垣根になむ咲きはべりける」
 ユウガオの咲いている家に住む女性ということから、夕顔の君と呼ばれるようになりました。

美しく、儚げなイメージの原点

 ユウガオの花には「美しく、儚(はかな)い」というイメージが付いて回ります。そのイメージの原点は千年以上も前の『世界最古の長編小説』にあると言っていいでしょう。それでは、作者の紫式部は、どうして薄幸のヒロインに夕顔と名付けたのでしょうか。

源氏物語の昔から栽培されていた

 ユウガオはウリ科の一年草で、夏の夕方に直径7〜10cmの白い花を咲かせ、翌朝にはしぼんでしまいます。原産地は北アフリカかインドと言われ、日本では源氏物語の昔から栽培されています。果肉の瓢(ひさご)=写真=を帯状にそいで天日で乾燥させたものが、巻き寿司の具材になる干瓢(かんぴょう)です。「干した瓢」がそのまま名前になりました。

綺麗な花と無粋な実

 それにしても、儚げなユウガオの花とその実のユーモラスな形の瓢は、見た目はかなり違います。源氏物語より少し前に完成した枕草子で、清少納言は次のように書いています。
 「夕顔は、朝顔に似て朝顔と並べて言いつづけているのは、おもしろいのが当然な花の姿であって、それにもかかわらずにくらしく、実のかっこうこそ、夕顔本来のよさを妨げてひどく遺憾ある。どうして、そんなふうにまた、生まれついてきたものだろう。(中略)けれど、やはり夕顔という名だけはおもしろい」=原文「夕顔は、あさがほに似て言ひつづけたる、をかしかりぬべき花の姿にて、にくく、実のありさまこそいとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけむ。(中略)されど、なほ夕顔と言ふばかりはをかし。」
 瓢の姿には興ざめした清少納言も、ユウガオという名前の響きは絶賛しています。

紫式部がイメージしたユウガオの花とは

 朝に咲いて昼にしぼむアサガオも短い命ですが、明るい朝に咲くのと夕闇を待って咲くのとでは、印象は全く異なります。紫式部は朝顔でも瓢でもなく、一夜限りの短い命のユウガオの花をイメージして、ヒロインに夕顔と名付けたのに違いありません。

 ユウガオの花言葉は「儚い恋」「魅惑の人」「夜の思い出」。夕顔の君にちなんだものばかりです。フランスで見つかった絵巻に描かれた夕顔の白い顔を見ていると、夜陰の中でひっそりと咲く白いユウガオと二重写しになってきます。

※引用文献
「源氏物語(一)夕顔(ゆふがほ)」(2017年、岩波書店刊)、「源氏物語 巻一」(1998年、著者:瀬戸内寂聴訳、発行所:講談社)
「枕草子一」(1989年、校注・訳者:松尾聰 永井和子、発行所:小学館)

※参考サイト
「朝日新聞デジタル2019年1月16日」「夕顔 かんぴょう」「大本山 石山寺公式ホームページ」

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元大手新聞記者。社会部記者、海外特派員、テレビ解説者、編集委員などを務めました。
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